トランプ人気の秘密は『弱者を弱者扱いしない事』

渡辺 龍太

次のアメリカ大統領に、ドナルド・トランプが就任する可能性もゼロとは言い切れない展開になってきたように思えます。私は約10年前には、アメリカで暮らしていて、トランプの起業に関する講演を直接聞きに行った事もありました。私の予想では、そういった講演には、意識高い系の学生やサラリーマンが集まっているのだろうと思っていました。

ですが、実際に会場に足を運ぶと、トランプの講演に集まった人は、どんなバックグラウンドの人でも挑戦できる『起業』しか人生で一発逆転がないと思っている、やや追い詰められている人が多かった様に思えました。ちょっとキツイ言い方をすれば、学歴が低く、言葉遣いも汚く、ホワイトカラーの人からは無教養な『アメリカの恥部』とか、『社会的弱者』と言われてしまいそうな人も大勢いたような気がします。

例えば、トランプへの質問コーナーで会場にいた40代後半くらいの男性が指されると、放送禁止用語の連発の様な言葉遣いでアメリカ政府を批判してうえで、トランプに起業の極意のような事を質問していました。すると、そういう汚い言葉遣いの批判に、会場は拍手などで大盛り上がりとなってしまったのです。

さすがにトランプ自身も、そういう盛り上がり方はよくないと思ったのか、『私がテレビ番組などで汚い言葉を使って盛り上げるのは良いけど、君がこういう場では、そこまで汚い言葉はつかっちゃいけないよ(笑)まだ、大きな成功をしてないうちに汚い言葉を使うと、ナメられる事もあるから気をつけたほうが良い。』と笑顔でたしなめていたような気がします。

また、その時すでに、そういった聴衆の中に『トランプを大統領に!』というプラカードを抱えている人々がいたのです。そういった集団は、トランプが講演会場に登場するや否や大きな声で直接本人に立候補を懇願していました。すると、トランプは『勝てる勝負なら、どんな勝負でもやるべきだ!』でも、選挙は自分の勝てる勝負ではないから出ない。というような断り方をしていました。

そして、トランプは『ワシントンの連中は勝負にこだわらないから失敗する。イラク戦争を見てみろ!勝てない勝負に出た連中が責任も取らずに、偉そうな顔をしている。だから、アメリカはダメなんだ。』というような事を付け加えて、会場がまた盛り上がっていました。

講演終了後、トランプを大統領にしたい人たちが、署名か何かを集めていました。私も、そういった人の一人に呼び止められ、トランプを支持しないかと誘われました。なので、『私は留学生だから選挙権は無いんだ』というと、『そんな事は無い。君は勘違いしている!アメリカは開かれた国なんだ。もっと、政治に関心を持った方が良い。』と、間違った情報で叱られました。そんな感じで、トランプの支持者と会話していて、トランプの人気の秘密が分かったような気がしました。

それは、トランプが決して『弱者を弱者として扱わない』という事です。まず、英語がわかる人は気づくと思いますが、トランプの言葉はシンプルで難しい単語が出てきません。なので、外国人や若者、教育レベルの低い人でも、トランプの話は簡単に理解できるのです。

そして、そういう人たちに多いマナーがなってない人々に対してでも、『投資についての勉強をすれば、必ず人生が開ける!私も最初は君たちと同じように全然投資について知らない状態から人生が始まって、投資についての勉強をしたから人生が開けたんだ。』と笑顔で丁寧に説きます。そして、そういう人たちが好きそうな、放送禁止用語の様な悪い言葉をあえて使って、会場を沸かせるのです。

また、最後にトランプは『アメリカを支えているのは、高学歴のエリートではなくて、起業にチャレンジして雇用を生み出しているようなビジネスマンだ。つまり、ワシントンの政治家や官僚なんかじゃなくて、投資や起業について学んでいる君たちだ!』という様な事も必ずつけ加えていました。そういうのを聞いていて、普段は社会のお荷物として扱われるような人々が、トランプのような経済的成功者の有名人に、『君たちが、アメリカの未来を支えるんだ!』という使命を与えられ、目から鱗的な感じでトランプの虜になっているのではないかと感じました。

そんな10年前の経験から、トランプが出馬したいきさつは、そういうトランプを大統領にしたいという人々の熱意が実ったのではないかと思います。そして、それがトランプにとっても『勝てる勝負になるかもしれない!』と感じさせるレベルになったからなのではないかと思います。だから、トランプは自分の熱狂的な支持者である『弱者』にアメリカンドリームを見せるために、綿密な計算の元に『失言』を繰り返しているのだと思います。

そういった事を考えると、黒人初の大統領となった上品なオバマ大統領よりも、金満主義的なトランプ大統領の方が『弱者』にとっては、『初めて、自分たちと同じ言葉を使い、同じような事を感じ、自分たちの存在をアメリカにとって大切な存在と認めてくれる大統領』というような存在にうつるのではないかと思います。

だから、難しく丁寧な言葉を使いながら、本当に弱者に役に立ちそうな政策に対して『弱者救済の予算を!』と言うような候補より、『君たちがアメリカの主役だ!』と説くトランプの方が、本物のように感じる人がおおいのでしょう。トランプの支持は、これから急落していくという予想が大方のメディアの論調ですが、社会的にお荷物扱いされている人々に希望を見出すトランプ旋風を、決して甘く見ない方が良いような気がします。

※最近、ブログではアメリカ大統領選に関する事をかいています。

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※このブログの著者プロフィール

渡辺龍太 放送作家(会話と文章の専門家)

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著書:『朝日新聞もう一つの読み方』(日新報道)
紹介ブログ:朝日新聞の押し紙問題!武田邦彦教授の解説が痛快すぎる

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