「橋ができれば必ず豊かになる」という幻想 --- 井上 貴至

橋が欲しい!道路が欲しい!!
田舎の、特に団塊の世代以上の男性からとてもよく聞くセリフです。

橋や道路の効果について一概に否定するわけではありませんが、橋や道路ができれば「必ず」豊かになるという考えは、「幻想」と言わざるを得ません。

そもそも補助金も国や県の税金である以上、「補助金もらえてラッキーというのは情けない話」ですが、橋や道路の建設は「費用対効果」だけが問題ではありません。

特に橋は、島の生活を大きく変えます。
便利になる反面、雇用や産業が失われることもあり得ます。

●航路の廃止
●民宿、飲食店への打撃
●学校の統合再編
●介護施設等への打撃

など島だからこそ成り立っている産業、特にサービス産業は大きな打撃を受けるでしょう。また、島だからこその良さやパワーが薄れることもあります。

もちろん、橋でつながることで新たな産業等が生まれる可能性もありますが、地域によってはほとんど生まれないところもあります。そのあたりのメリット・デメリットを冷静に考えていくことが大切だと思います。

そういうと、経済の観点だけではなく、「救急医療にアクセスするために橋が必要だ」という人がいますが、今はドクターヘリなども充実しており、代替可能な場合も多いでしょう。そして、ドクターヘリが飛ばないような荒天の場合には、橋をかけても通るのが難しいでしょう。

橋の建設を主張する人の中には、「離島は生活のすべてに悲哀を感じている。だから橋が必要だ。」と煽る人もあります。

でも、日本では移動・居住の自由が認められているのですから、生活のすべてに悲哀を感じているならば、島の外に移り住めばいいのです。

これは、なにも言葉尻を捉えているわけではありません。
そのような状況で仮に橋を造ったとしても、都会と同じ便利さを求めて、あれが欲しい、これが欲しいと言い続けて、いつまでも不平や不満があふれてくるのではないでしょうか。

「人も地域もダイヤモンド」。見方を変えれば輝き方が変わります。今の島の生活にある素晴らしさを見つめなおした方がよほどいいと思います。

例えば、島の人が何気なく食べているお魚は、都会に行けば一食数千円することも珍しくありません。島の人があまり意識していない豊かさもたくさんあります。

もちろん、島の中で生活がほぼ完結していた時代と違って、生活や経済圏が広域化するに伴い、島に住むことで追加的な費用がかかることも事実です。そこについて何らかの支援は必要かもしれませんが、だからといってその支援が橋を造るという形になるのはいささか短絡的です。島民の航路利用を減免するなど取るべき手段は他にもあります

それぞれのメリット・デメリットを検討するためにも、まずは、「みんなで」「楽しく」「語り合う」ことが重要ではないでしょうか。「みんなで」というのは、特定の世代だけではなく、若者や女性、そして地域の外に住むファンも含めてです。特に大切なのがファンの存在です。ファンはその地域に対してすごく真剣に考えていますし、地域の中に住む人だけでは気づかない視点や解決策を提示してくれます。

橋が欲しい、道路が欲しいと叫ぶその前に、「みんなで」「楽しく」「語り合って」みませんか。

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補助金もらえてラッキーというのは情けない話
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<井上貴至(長島町副町長(地方創生担当)プロフィール>
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68458684.html

http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68480758.html


編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2016年1月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。