イランは24日、エアバス旅客機114機を購入すると発表した。このニュースを聞いた時、「本当に良かった」と思った。なぜ、そのように考えたかを以下、説明する。
▲墜落事故が頻繁に発生したイラン航空機(ウィキぺディアから)
イランは核開発計画の容疑問題に関連して久しく国際社会の制裁下にあったので、古くなった旅客機の部品すら購入できない状況が続いてきたが、今月16日、「イランが核合意に基づく措置の履行が完了した」(国際原子力機関=IAEAの天野之弥事務局長)ということで、対イラン制裁が解除されることになった。その最初の成果がイランのエアバス旅客機購入となって結実したわけだ。
国際社会の対イラン制裁は単にテヘラン指導部だけではなく、一般国民の生活を窮地に陥らせた。その一つはイランの航空機が頻繁に事故を起こし、墜落するケースが挙げられる。最新航空機を購入できないこと、古くなった高級機の部品、メンテナンスが難しい、といった状況が続いてきたからだ。米国の対イラン経済制裁は1979年からスタートしている。核問題に関連した国連の制裁は2006年からだ。
当方の知り合いのイラン出身の女性記者は、「イラン航空機は絶対に利用しない。いつ墜落してもおかしくないからね」といっていたことを思い出す。イランの航空機は危ない、というのはイラン国民自身が知っていることだ。
同女性記者は当時、「国連の制裁の影響でイラン航空はしばしば事故を起こしているのよ。メディアには余り報道されないけれど、飛行機の調子が悪い、といっては途中、緊急着地したりしている」と教えてくれた。だから、テヘランに行く時はトルコ航空を利用すると語っていた(「イラン航空は怖い」2013年7月21日参考)。
実際、イランで国内線旅客機の事故が頻繁に起き、墜落事故も少なくない。墜落事故としては、イラン航空277便墜落事故(2011年1月9日、死者数77人)、カスピアン航空7908便が2009年7月15日、地上に墜落し、168人が死亡するという大惨事が起きた。14年8月10日には小型旅客機が墜落して39人の犠牲者が出たばかりだ。中国新華社電(2014年8月11日)によると、「旅客機の老朽化で過去25年間、イランでは200件の墜落事故が発生している」という。
興味深いことは、イランのエアバス旅客機購入のニュースが流れた同日、インドを訪問中のフランスのオランド大統領はインドに仏戦闘機36機の商談をまとめたという。インドは戦闘機を、イラン側はエアバス旅客機114機を、それぞれ購入するわけだ。
テヘランからの情報によると、イランは今後3年間で500機の旅客機が必要という。いずれにしても、イランの旅客機購入ニュースはイラン国民が経済制裁の解除を実感できる朗報となっただろう。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年1月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。