自民が総理への提言に載せた被選挙権引き下げの実現性

自民党は安倍総理への提言の中に『被選挙権年齢』引き下げの検討を明記

9月17日の自民党政調会での確認された『成年年齢に関する提言』の中で「社会的に関心の高い事項について」として、メディア等でも報道されているように、「飲酒、喫煙年齢」について18歳への引き下げと現状の20歳の規定を維持する事が併記され、引き続き検討するとされたのと共に、引き続き検討する項目として「公営競技の禁止年齢」と共に、「被選挙権を有するものの年齢」についてもはじめて明記された。
まだ検討とする文言が掲載されたに過ぎないが、この提言内容は自民党総務会も通っていると言うので、今後の可能性も感じる。
被選挙権に関しては、18歳選挙権実現の最終段階で、与野党による選挙権年齢に関するプロジェクトチームの座長で、当時発議者代表として答弁していた船田元 衆議院議員(自民)も、「今後、被選挙権の引下げということについても、我々が今つくっておりますプロジェクトチームでも是非これは議題としてしっかりと取り上げて、できるだけ早く結論が出るようにしていきたい」と答弁しており、18歳選挙権実現以降、現状ではプロジェクトチームの動きが止まりつつあるが、18歳選挙権実現を控え、期待する部分もある。

民主党代表が「被選挙権を下げる法案を今国会に提出する」と発言

被選挙権年齢引き下げに向けて、いきなり動き出す可能性もある。
年明け早々1月5日の記者会見で、民主党の岡田克也 代表が、国会議員や地方自治体の首長などに立候補するための被選挙権年齢を引き下げる法案を今国会に提出すると発言したためだ。
岡田代表は、投票だけではなく、若者たちがしっかりと政治に参加できる政治の必要性を挙げ、知事や市長、国会議員に選ばれて、若い世代の考え方がしっかり反映される政治をめざしたい、とも話しているという。
面白いのは、民主党が被選挙権年齢引き下げを参院選前の今国会に提出すると言っているところだ。
これまでもコラム等で書いてきたが、いよいよ今夏の参院選から18歳選挙権による選挙が実現する。
各党は、この制度改正を受け、どうやって若者たちにアプローチをかけていこうかと、様々な働きかけをはじめている。
こうした状況の中においては、若者に向けてどのような政策を提示するかも若者にとっては、大きな注目ポイントになる。
今国会で民主党が被選挙権年齢の引き下げ法案を提案するとする。
現状で、民主党単独で提案したものが、実際に法案可決へと繋がるかを考えると、現実的には難しいだろう。
しかし、表面的には各党も「若者の味方」、「若者の声を聴く」というメッセージを示しながら、一方で実際には若者の政治参画を進めようという政策には反対するというのでは、説明がつけ難くなる。
冒頭にも書いたいように、実質的に国会の中心として18歳選挙権実現へと導いた船田元 選挙権年齢に関するプロジェクトチーム座長(自民)の答弁を素直に読めば、被選挙権についても、与野党超党派による合意にまで結びつけさえすれば、一気に進むことも考えられなくはない。
若者たちには、こうした国会の動きについても、是非注目してもらいたいと思う。

世界における被選挙権は、政策判断により3分割

各国の被選挙権年齢

25歳 日本、アメリカ合衆国、イタリア
21歳 ロシア
18歳 イギリス、ドイツ、フランス、カナダ

被選挙権について、これまでまとめて書いている文献が少ないので触れておくと、選挙権が世界198ヶ国において85%もの国と地域で18歳から保障しているのに対し、被選挙権年齢はそこまで顕著な形にはなっておらず、政策判断により3分割されている。
1つは、 「選挙権と合わせるべき」との考え方から同時に18歳から保障しているケース。
2つ目が 、多くの国がそもそも成人年齢として設定していた21歳にされているケース。
最後に、日本同様に25歳に設定しているケースだ。
サミット参加国で言うと、日本の他にアメリカ、イタリアは25歳で保障している一方で、イギリス、ドイツ、フランス、カナダは18歳ですでに被選挙権を与えている。ちなみにロシアは21歳からになっている。
現状の18歳で被選挙権を与えている国の中でも、18歳に引き下げられた際の考え方が国によって異なる。
例えば、スウェーデンは、1976年に選挙権年齢が18歳に引き下げられた際、選挙権年齢と被選挙権年齢は同じ年齢であるべきだという考え方から、被選挙権年齢も一緒に18歳に引き下げられた。
一方でイギリスは、選挙権年齢が先に1969年に18歳に下げられ、被選挙権年齢が18歳に引き下げられたのは2006年になってからだった。
またドイツは、1970年に選挙権年齢が18歳に引き下げられた際に、被選挙権年齢と成人年齢を重ねるべきだとして、被選挙権年齢を成人年齢(当時21歳)に引き下げ。その後、成人年齢をさらに18歳に引き下げたことで必然的に被選挙権年齢も下がり、現在は、選挙権、成人年齢、被選挙権年齢ともに18歳となっている。
こうした中で、日本は被選挙権年齢をどう位置づけるのかを考えていく必要もある。

若手政治家の少なさと、日本でも若いリーダーを誕生させるために

30歳未満の若手国会議員の占める割合を見ても、日本の若手議員の少なさが分かる。
ドイツの6.0%、ノルウェーの5.6%、スウェーデンの5.0%などと比べると、日本はそのわずか1/10程度の0.6%でしかない。
地方議会における若手議員の割合については、さらに少なく0.1%しかいない。(2011年統一地方選挙実績)
※ 詳しくは『地方創生のカギを握るのは「優秀な若手」である ~若手地方議員 都道府県別ランキング』( http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52025944.html )参照を。
日本でもようやく若手首長などと言われるようにもなってきたが、欧米においては、さらに若い世代が当選している。
すでにアメリカでは、2001年にペンシルバニア州マウントカーボン町に18歳の大学生町長が誕生し、2005年にはミシガン州ヒルズデール市に18歳の高校生市長が誕生しているのだ。
首長や政治家が若ければ若い程いいなどという短絡的な話をするつもりはない。
ただ、日本全体の今後を考えれば、若者も含めより多くの人が挑戦できる中から選ばれていく方が、より優秀な政治家が選ばれる可能性は増える。
とくに日本の場合、年功序列的な考え方が根強く、議会でも期数がものを言う。
日本の歴代総理大臣の中で最も若く総理になったのは初代伊藤博文の44歳だが、海外で若いリーダーたちが生まれる中で、日本の戦後最年少総理は安倍晋三 総理の52歳だ。
戦後最年少大臣は、34歳で内閣府特命担当大臣(男女共同参画・少子化対策)になった小渕優子 議員だが、26歳で初当選している。
ちなみにその前の最年少記録は、冒頭で選挙権年齢に関するプロジェクトチームの座長として紹介した船田元 議員で、39歳で経済企画庁長官を務めているのだが、この船田議員は25歳で当選している。
こうした中では、若く初当選する議員を生みやすい仕組みをつくる必要もあるのではないだろうか。

国会においてもようやく『被選挙権年齢』が議論されるように

国会の中でもようやく被選挙権年齢の引き下げについても議論されるようになってきた。
2011年1月から現在までの過去5年分の国会における本会議はじめ各委員会での全議事録を調べてみたところ「被選挙権年齢引き下げ」について言及した発言は32人が質問、答弁、討論、意見陳述など計62回行っていた。
この国会会議録データで、最初に質問していたのは、2013年2月23日の180国会における衆議院 憲法審査会での木村太郎 議員(自民)の「選挙権年齢引き下げと同時に被選挙権年齢引き下げを議論しなくていいのか」との質問で、その際の田口尚文 総務省自治行政局選挙部長の答弁は、「現時点で議論はしてない」というものだった。
2013年11月14日の185国会における衆議院 内閣委員会になると、私が田原総一朗さんらと3人で提案した自治体ごとに地方選挙における選挙権・被選挙権を決められるという国家戦略特区提案が国会でも話題に。
2014年4月22日の186国会における衆議院 憲法審査会で参考人として、ドイツの事例を挙げ選挙権年齢引き下げと同時に、被選挙権についても引き下げの議論をと発言した。
2015年5月28日の189国会における衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会以降は、急激に被選挙権に関しても発言が増えた。
冒頭にも紹介したように、18歳選挙権実現の最終段階では、与野党による選挙権年齢に関するプロジェクトチームの座長で、当時発議者代表であった船田元 衆議院議員(自民)は、「今後、被選挙権の引下げということについても、我々が今つくっておりますプロジェクトチームでも是非これは議題としてしっかりと取り上げて、できるだけ早く結論が出るようにしていきたい」と答弁している。
同じくプロジェクトチームの中心として活躍してくれた北側一雄 議員(公明)も発議者として「18歳選挙権が実現をいたしましたならば、今委員のおっしゃったように、被選挙権の年齢、現行の30歳もしくは25歳という年齢の引き下げについて、ぜひ政党間での協議を進めさせていただきたい」と答弁している。
若者は、この被選挙権の実現を18歳選挙権に続く二の矢として、国会に突きつけながら、今国会、各党、また各国会議員がどのような発言がなされるかしっかりとチェックしていてもらいたい。

<参考>http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52050652.html

高橋亮平(たかはし・りょうへい)
中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人 生徒会活動支援協会 理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て現職。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。 テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。
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