今週の政治経済の出来事から

今週もつぶやくには事欠かないようです。気になっている事柄を簡単に纏めてみたいと思います。(政治経済に限りますが。)

恒例のアメリカの雇用統計。1月分が発表され事前予想の190千人増を大きく下回る151千人増となりました。但し、この雇用統計に市場はあまり反応していません。内容的には感謝祭、クリスマスにかかる一時雇用者が例年通り、1月の統計でマイナス要因となっています。数にして25千人程あるとみられます。また、既に失業率は4.9%と現実的な意味での完全雇用に近い状態にありますので雇用統計が20万人越えを何か月も継続するようなことはこの水準では起きにくくなってきます。

むしろ、今後の注目は平均賃金でしょうか?今月は12セントないし0.5%アップで前年比では2.5%上昇となっており、これがどういう推移を示すのかに注目が集まるかと思われます。アメリカ経済は先日のISM統計も含め、このところ弱含みの数字が並んいます。統計数字で一喜一憂する場面は今後も想定されますが、下向きのトレンドが形成されつつある点は留意です。通常、大統領選のある年は株価と景気は良いとされるのですが、異例の本命なき戦いは経済も混迷の度を深めるということでしょうか?

ダウは金曜日も200ドル余り下げましたがむしろ主導したのはナスダックで特にリンクトインは株価が一日にしてほぼ半分近くなるほど下げ(終値でマイナス43%)新興企業への連鎖売りが出てしまいました。決算発表が続く中頭が痛いというところでしょうか?

次に移りましょう。シャープです。私は条件としては鴻海の方が優れていると言い続けましたが日経は産業革新機構で決まりという報道を繰り返していました。日経がどういう言い逃れをするのか楽しみにしていたのですが、30日に郭台銘董事長が高橋社長に会った時点で日経も「もしかしたら」という気になったようです。まず、編集委員の記事で「鴻海の条件も悪くないかもしれない」とぶち上げました。これは「革新機構で決まり」としていた手前、方向転換の準備を始めたと感じました。そして衝撃の高橋社長会見を受けて「革新機構で決まりだったはずだが」とし、経済産業省も驚いたという実に言い訳がましい記事となりました。FTも買収して高品質の記事を提供すべき日経の立場としてはかなりお粗末でした。

では、なぜ日経も経産省も読み違えたかですが、二点あります。一つは鴻海とシャープの関係が悪化したのは片山幹雄元社長(現日本電産代取)の迷走によるところが大きく、両社の関係は決して悪いわけではありません。もう一点はシャープという遺伝子が普通ではなく、それを見落としたことかと思います。私はシャープはジャパンディスプレイと一緒になってもうまくやれない、と以前指摘しましたが、それは企業には性格や相性があり、合わない者同士は全くくっつかないということです。経産省は企業の人格や性格、適性を無視し、机上のパズルで東芝救済策まで完成させ悦に入っていたのでしょう。役人の弱点が見事に出てしまいました。

もう一つの「役人の悦」の話題を提供しましょう。TPPです。今週、ニュージーランドで署名式がありました。これで内容は確定、2年以内に全部の国が批准することが求められ、仮に達成しない場合、GDPの85%を占める最低6か国が批准しなければなりません。繰り返しますが、これはアメリカと日本が批准しないとTPPは没になる、ということです。

さてこのTPP,本当に批准するのでしょうか?多分ですが、ほとんどのメディアはTPPはもはや成立したものぐらいに思っているはずです。私はずっと疑問視しており、当地カナダで政府関係者も参加する複数の講演などを通じて微妙な感性を探っていますが、総合的に勘案するとズバリ今の状態での成立の可能性は5割以下かと思います。理由はアメリカです。

多くの大統領候補はTPPに反対か、話題に触れないようにしています。明白に反対としているのはトランプ、クルーズ、クリントン、サンダース各氏で、その理由はTPP効果の疑問視だろうと思います。なぜ、アメリカはこれほど変わったのかといえばシェールオイルと度重なるテロ、更には中国とのかみ合わないバトルで孤立主義の色彩が強まってきているようにみえます。利上げ議論でも基軸通貨故に新興国やIMFから慎重論を叩きつけられ、かつての自由気まま、先頭を切ってやりたい放題の時代がとっくに過ぎ去ったことを悟りつつあるのだろうと思います。

もう一つ、TPPに内包されている関税の自由化。例えば自動車部品のアメリカ向け関税撤廃は25年後です。今、自動運転の新たな車が飛び出そうとしているのに25年先に今のビジネスモデルが存在する前提の話は役人の「力量ゲーム」でしかありません。つまり、TPPには政府間の力学が先行し、本来メリットを享受する民間を置いてきぼりにした感があります。TPPについては言いたいことは山ほどあるのでまた今度改めてトピを立ち上げたいと思います。

ではよい週末をお過ごしください。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 2月6日付より

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。