▲日本型教育を象徴する組体操が見直されている(アゴラ編集部)
日本の学校で学んだ経験は1年ほどしかないので偉そうなことは言えませんが、様々な事で「不思議」を感じることがあります。
予算委員会でも取り上げられていましたが、組み体操もその一つです。基本的に全員参加で、他の学校と高さを競うような種目もあります。
昨年9月、大阪府八尾市立の中学校で10段ピラミッド(約7m)が崩れた事故があり、6人が骨折等のケガを負いました。7mというと、2階建て建物の屋根くらい。生徒をそんな高さに命綱もつけず晒すこと。また、土台の生徒には最大200kgもの負荷をかけさせること。なぜ、このようなことが許されているのでしょうか(自分の子どもが不安定な2階建ての建造物の上に乗っていたら、絶対に降ろしますよね)。
実際に組み体操をさせている教師や学校側(+一部の保護者やOB)の言い分としては、みんなで何かをやり抜くことで協調性を養えるし、一体感も味わえる。何ものにも代えがたい達成感が得られるというのがあるようです。
もちろん、協調性、一体感、達成感、感動、そして伝統といったものの価値を否定するつもりはありません。
しかし、そのために生徒の安全が犠牲になってよいとは思いません。
組み体操による重度のけがの実態についてなされた初の分析結果によると、昨年度までの3年間に全国の小中高校で起きた事故での負傷者は1年あたり平均で8664人、うち脊椎骨折や脳挫傷、脊髄損傷、内臓損傷など後遺症が残るおそれがある重傷者は90人にも上るとのこと。
今回初めて示された数字的な分析結果は、冷静になって考え直すための重要な指標です。これをきっかけに、特に危険性が高いピラミッドやタワーについては、禁止するか、少なくとも高さ制限などを設ける必要があります。
自治体や学校ごとの取組みに任せると、これまでやってきた教師や卒業生などからの抵抗も想定され、なかなか進まないところが出てくることも想定されます。その場合は、国が主導して行う必要があります。早急に全国一律で安全体制が整備されなくてはなりません。
他のスポーツだって危険ではないかという意見もあるでしょう。たしかに、柔道やバスケ、サッカー等もケガのリスクはあります。しかし、これらには体育の授業で教育すべきものとして一定の制約があります(不十分であることが分かれば順次改善が必要なのは当然です)。しかし、組み体操は、指導要領にも記載がなく、これといったルールがないのが問題です。
これだけ危ないことを学校の伝統として続けるのは、危険性について合理的な判断が下されなくなってしまっている証拠です。つまり伝統の名のもとに「思考停止」状態になってしまっているのです。
多様性より協調性と単一性を重視してきた日本には、学校に限らず、このような事が多々残っているように思います。
そのような事を一つひとつ炙り出して、皆で議論していかなくてはなりませんね。不必要なことを強制されて、事故で亡くなったり、後遺症を持ってしまったりしたら、後悔しきれません。
編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年2月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。
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