預金金利の行方

日銀がマイナス金利を導入したものの直ちに我々の預金がマイナスになるわけではない、と説明されている一般の預金金利。さて、どうなるのでしょうか?

本田悦朗内閣官房参与は物価等の動向次第で3月にも日銀の追加金融緩和がある可能性を指摘しました。基本的には日銀は独立していますから政府がどうこう言おうが、日銀は独自の判断をするはずですが、私も好む好まざるにかかわらず、3月に追加緩和を打ち出す可能性は否定できない気がしています。

理由はマイナス金利幅の拡大は「三途の川」を渡った今、新しい手法ではなく、やりやすいこと、マイナス金利先輩のスイスがマイナス0.75%程度まで幅を広げていることを考えれば0.1%のマイナスはまだ序の口という精神的気安さがあります。

二つ目に夏の選挙に向けた対策をとる必要が出てきたことでしょうか?公募議員の相次ぐ不祥事に甘利元大臣の秘書の無謀振りが暴かれつつあり、自民党に叩かれやすい環境が醸成されつつあります。選挙までまだ半年近くある中で更なる問題が出ないとは限らない中、国民を喜ばせるには株式市場と為替市場を安定させるなどのスマッシュヒットを飛ばさなくてはいけません。先日安倍総理と黒田総裁が会合をしましたが、マイナス金利の効果を確認したような気がします。

三つ目にECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が3月の政策会議で金融緩和を行うことを匂わしている点でしょうか?日本は一応、ユーロと共に歩調を合わせた方がよいという思想はありかと思います。そして、アメリカのFRBも3月の政策会議で金利のバーを引き上げるのか、注目されるところです。仮にコンセンサス通り利上げを見送ればドル安効果が出ますので日欧は否が応でも対策を講じなくてはいけないということになります。

さて、ここを踏まえて今日の本題、我々の預金金利ですが、どうなるのでしょうか?

りそな銀行が普通預金の利息をこれまでの0.02-0.025%から0.001%に引き下げることを発表しました。ほとんどない利息ですから気にならないかもしれませんが、よく見れば一気に20-25分の1に減るのです。はっきり言って利息とは名ばかりのナッシングだと断じてもよいでしょう。同じことは定期預金にも言えるわけです。もっとも昨日、今日に始まったわけではないのですが、今まではあたかも∞(無限にゼロに近づく)イメージが強く、マイナスになるという基本発想がありませんでした。

が、銀行間金利はマイナスが日常茶飯事となってきた以上、バイブルは変わったと言わざるを得ないのでしょうか。

私がカナダで開設する法人の口座。某カナダ大手銀行の担当者から数年前に連絡があり、「口座管理料を引き上げさせてほしい」と。口座ごとの配分はあなたの好きにして良いけど全体で月に200ドル欲しいというのです。4つぐらいしかない口座で200ドルも欲しいのはなぜ、と聞けばクレジットカードの入金や現金の入金が多いと指摘されました。北米は現金を嫌いますし、口座のステートメントが長いのも費用対象になりやすいのかもしれません。

では個人の口座はどうか、といえば私の場合、別の某大手銀行の口座で管理料を月4ドル取られ、優良顧客だからという理由で4ドルをクレジット(値引き)する2段書きの仕組みになっています。優良顧客の定義は分かりませんが、こちらの銀行口座は小切手口座、定期、老齢年金口座、クレジットカードなどすべてのアカウントが一体化しています。よって、長期安定の顧客(long term client)、預金量、クレジットカードの支払いなどの信用などが加味されているものと察します。

ちなみにカナダはマイナス金利ではありませんが、銀行は事務手数料のような形でこのようなチャージを普通に行っています。

日本では一部法人について口座管理料を課す方向で検討が進んでいるようですが、中小企業が除外されているとのことでした。日本のほとんどが中小企業なのにそれを除外する意味が私にはほとんどわかりませんが、さほど遠くない時期に上場企業といった第一弾枠から徐々にそのすそ野を広げていくことになると思います。

考え方としては飛行機のサーチャージのようなものです。航空券の様に定価がほとんどない世界でよく考えればなんで燃料費があるのか論理性に欠ける気がしますが、結局はあれが航空会社の経営を支えていたとも言われています。ならば口座管理料という名目の費用が金融機関の経営を支えることが当たり前になっても論理的にはおかしくないことになります。

では、こんなことが許されるのか、といえばお怒りの国民は非常に多いと思います。銀行マンの苦悩の始まりだと言ってもよいでしょう。多分、銀行も努力しなくては説得できくなると思います。ではどう努力するか、ですが、今の時代、駅前の一等地にどんと巨大なスペースを借りて営業する銀行は殿様だと思っています。弊社の商業不動産テナントに大手銀行が入っていますが、大きさは200㎡ぐらいでフル リーテール機能を持っています。いわゆるアンテナ店舗と言われるものですが、それでも問題ないのはわざわざ銀行に来なくても多くの作業がはかどるということではないでしょうか?私も日本の法人の金銭のやり取りはほとんどがネットバンクとATMで済むわけで窓口業務は大きく変貌する気がします。

そう考えると日本の銀行が大変革期を迎えることにも繋がるでしょう。預金金利のマイナスというストレートな表現はなくても様々な銀行の費用がこれから当たり前のように増えてくる時代に突入しそうです。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 2月18日付より

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。