スーパチューズデー、共和党予備選挙ポイント(2)

ルビオの選挙戦略の巧みさが目立つ序盤戦、予備選挙の戦いは中盤戦に突入へ

サウスカロライナ州予備選挙直前、ルビオ氏は隠し玉ともいえるエンドースメントを発表してブッシュ・ケーシックなどの他主流派候補者を突き放すとともに、クルーズ氏を差し切って得票率2位の座を確保しました。

そのエンドースメントとは昨年12月で州内の共和党員から81%の支持を獲得する人気のサウスカロライナ州知事からのエンドースメントです。ニッキー・ヘイリー知事は保守派からも絶大な人気を誇る女性知事であることから、州経営の実績・保守派からの決定的支持などが不足しているルビオ氏にとっては良いパートナーとなるため、副大統領候補者としても名前が挙がっています。

また、ネバダ州党員集会直前にも同州のキーパソンである上院議員からエンドースメントを確保し、その推薦理由として「次世代の保守リーダーであること」を挙げさせるなど、保守派のテッド・クルーズへの運動への打撃を与える巧みさを披露しています。結果としてネバダ州でもクルーズ氏を差し切る形で2位に入り込んでいます。

さらに、豊富な運動力を誇っていたものの既に予備選挙撤退を決定したランド・ポール氏のスタッフを選対の重要メンバーとしてM&Aするとともに、スーパーチューズデーに備えて既にテネシー州知事・アーカンソー州知事らキーパーソンのエンドースメントを獲得しています。

マルコ・ルビオ氏は場面によって主流派と保守派の使い分けを行うことで、着実にトランプ・クルーズへの優位を確立しつつあります。

3月1日のスーパーチューズデーでは何に注目するべきなのか?

スーパーチューズデーでは合計661人の代議員から指名の行方が決まることになります。現在、トップのトランプ氏の代議員獲得数が82であることを考えると、スーパーチューズデーのインパクトの大きさが理解出来ます。

今年のスーパーチューズデーは、ジョージア、オクラホマ、テネシー、アラバマ、コロラドなどの2012年に保守派のサントラム・ギングリッジが勝利した州が多く、クルーズ氏の地元であるテキサス州が入っていることなどが特徴です。つまり、保守派が獲得可能な州の代議員総数は419ということになります。

上記の保守派にとって実績がある各州でクルーズ氏が幾つトップを取ることができるのか、という点が最大の見どころとなります。特にトランプ氏の全米支持率1位が不変の状況なので、クルーズ陣営としては地元のテキサス州知事からのエンドースメントを得ている状況でのテキサス州予備選勝利は必須となります。

仮にテキサス州でクルーズ氏が敗れることがあれば、トランプVSルビオの構図に絞り込まれることになり、テキサス州でクルーズが勝利した場合三つ巴の状況が続くことになると推測されます。

3月2日~5日に開催されるCPACによる模擬投票で予備選挙見通しが決まる

3月2日~5日までワシントンのナショナルハーバーで全米の共和党保守派数万人が結集する大会であるCPAC(Conservative Political Action Conference)が開催されます。CPACでは全ての大統領候補者が演説を行った上で、保守派のリーダーたちによって誰が最も大統領にふさわしいのか、という模擬投票が行われる慣例があります。

共和党大統領予備選挙においてCPACの模擬投票は決定的な意味があり、2012年に主流派と見られていたロムニー氏が保守派のサントラム氏に模擬選挙で勝利したことで予備選挙の決定的な流れが決まった経緯もあります。その際、ロムニー氏は自分がいかに「保守」であるのかということを会場の聴衆に向かって必死にPRしていたことが印象的でした。

ちなみに、CPACに一度も足を踏み入れたことがない日本人有識者が米国共和党を解説することは難しいでしょう。昨年2月末のCPACでジェブ・ブッシュ氏は既に勢いに欠いており、傍から見ていても支持が伸びないのは明らかでした。しかし、CPACの状況を知らない日本の有識者らは日本メディアで「ブッシュ優勢」を伝え続けた、という残念な状況がありました。

予備選挙の展開が、トランプVSルビオに絞り込まれるのか、それとも三つ巴になるのか、は分かりませんが、同投票で1位になった候補者が保守派からの支持を完全に固めることは間違いありません。CPACではルビオ氏かクルーズ氏が最多得票を確保するのではないかと予想されるため、正式な保守派の代表はどちらなのか、ということが決まることになり、勝者に予備選挙全体の形勢が大きく傾くことが予想されます。

一方、トランプ氏については保守派運動員による足腰が他両氏と比べて弱いため、CPACでの模擬投票の勝利に関しては不透明な状況です。そのため、トランプ氏としては「CPAC前のスーパーチューズデーで他候補に圧倒的な差をつける」ことが予備選挙勝利に向けて必須であると言えるでしょう。

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渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事
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