スマホ決済でアップルとサムスンが激突。日本は蚊帳の外だけど

大西 宏

携帯やスマートフォンによる決済は日本が先行していたはずですが、世界市場では、アップルとサムスンの両巨頭が覇権を争って、米国、ついで中国で激突がはじまっています。スマートフォンも市場の成長期が過ぎ、主戦場がハードからサービスに移ってくるなかでは、決済システムは手数料を稼げるビジネスなので、どこが主導権を握るのかで収益力にも差がついてきます。


スマートフォンは、市場の成長鈍化、追い上げてくる中国メーカーとの競争激化の時代にはいってきています。サムスンはその影響を大きく受け減益が続いていました。しかし、昨年下期の決算を見るかぎり、ようやく変化への対応ができ、2016年は出荷台数を前年比で約12%減らす計画です。
そうなると、成長の種として、いよいよ「アップルペイ」と対抗する「サムスンペイ」の普及に注力してくることになります。アップルも同様で、ながらくイノベーションがないために成長力にも限界がでてきており、決済システムで新たな経済圏を築きたいところでしょう。アップル対サムスンは新しいステージでの競争になってきます。

まずは昨年に米国市場から激突がはじまりました。サムスン・ペイは既存の決済端末も使えるので有利だといわれていますが、どうでしょうか。滑り出しはいずれもが好調のようです。
サムスンペイが米国で健闘…関連株も揺れる  | 中央日報

そして中国市場です。中国のモバイル決済利用者は3億5800万人を超えているといわれているので、巨大市場です。おそらく主戦場になってきそうですが、アップルは、中国の銀行カード決済市場で独占的地位を占める中国銀聯のほか、19の現地銀行と提携してサービスをスタートさせました。サムスンもモバイル決済サービス「サムスンペイ」の中国でのモニタリングを開始し、3月から商用化が始まる見込みだと伝えられています。
アップルとサムスンの対決続く=サムスンペイ、中国でのモニタリング開始:レコードチャイナ

しかし、中国のスマートフォン市場でサムスンは昨年6位に転落し、アップルも3位となり、主導権を握っているのは台頭してきた中国勢なので、むしろ決済サービスでも、本命は中国勢のほうかもしれません。
中国スマフォメーカーの小米(シャオミ)が決済システム提供会社「睿付通」の65%の株式を取得 – 中国IT業界よもやま日記

しかし、技術でもシステムの普及でも先行していた日本は、国内以外はまったく蚊帳の外だというのが、残念なところです。じっくり日本の戦略を考えるべき時期に来ていると思いますが、日本がどこで勝負をかけていくべきかで興味深い書籍が出版されました。



日本の企業の多くに欠けていたのは「戦略」だったとする研究で注目されている神戸大学の三品和広教授の新刊で、日米再逆転の戦略はセンサーネット構想だとする提言です。イギリスの植民地でしかなかったアメリカがなぜ独走体制を築き、日本の攻勢で製造業が大打撃を受けたにもかかわらず、21世紀を呼び込めたのかといった歴史的な考察もあって読み物としても面白い一冊です。