国連安全保障理事会の北朝鮮への制裁決議の全会一致の採択、更に欧米の独自の制裁強化案、日本も別枠で制裁強化しています。中国は国連での採択を前に北朝鮮からの石炭の購入を一部の国境で禁止しました。
内容は相当厳しく、特に航空機燃料を止められたことで愚の根がでない状態となりました。更にすったもんだしたものの中国が制裁案に同意した点については大いに注目できる点であります。
さて、米韓の合同軍事演習が7日から4月30日まで行われるにあたり、北朝鮮側もピリピリ状態で特殊部隊が「わずかな動きでも見せれば、事前制圧のため先制の作戦遂行に入る」と警告を発しています。この発言にある「わずかな動き」の具体的に意味するところが分かり難いのですが、一触即発の状態が生まれる可能性が高い気がします。
国連を含む北朝鮮への追加制裁で実質的に金正恩氏は手足を奪われたも同然であり、通常であれば金体制の崩壊も視野に入ってくることになります。一般のメディアには出てこない話題だと思いますが、関係各国は当然そのあたりの研究、対策、連携の動きはあると察します。
北アフリカの春の時を思い起こす限り、崩壊するとそこからは早い展開となります。仮に軍事的な衝突があった場合、現在の力の差からすると北朝鮮を本気で制圧するなら数日とかからないでしょう。多くの北朝鮮人民は金体制を一種の精神的意思で支持していますから金正恩氏が囚われた瞬間、どれだけの軍事力と軍事訓練を積んだ軍人がいたとしても精神的崩壊を招きます。戦争は極度の緊張状態の中で行われるわけですが、その精神的支えがあってこその戦争であります。武器や弾薬の量が戦争の行方を支配するものではありません。これは日本も同様の経験しているからお分かりいただけると思います。
北朝鮮に新政権が出来た際、その手腕次第ですが、一部人民は難民や棄民として陸続きの中国と韓国に流れ込む可能性はあります。人口は2500万人でちょうど韓国の半分でシリアより若干多い水準です。欧州の難民問題を見る限り、ドイツで100万人受け入れる経済的余裕があったものの国内の治安情勢などが悪化しており、社会問題と化していることも事実です。
カナダの場合もシリアを含む難民を一定数受け入れていますが、その受け入れ都市、地域をバラバラにして少人数グループに分け、名も知らない小さな街を含め分散化して受け入れの影響を最小化する対策を取っています。欧州の難民の場合、教育水準が極めて低く母国語さえ書くのは十分ではないといったレベルでその人たちを受入国が職業訓練を施しているようですから気が遠くなるプロセスだと思います。北朝鮮の場合、言葉のハンデがない韓国がやはり影響を受けるのではないでしょうか?
一方、経済支援は急速に活発化し、中国と韓国にとってはフォローの風が吹く分野が出てくるとみています。それこそインフラ整備が進むためにだぶついてた資源のストックが動くことになり、言い過ぎかもしれませんが、世界経済が好転するきっかけとなりえます。
今回、国連および中国がかつてない行動に踏み込めたのは金正恩氏の人徳のなさが全てであったと思います。父の金正日氏はそれでも中国にはしばしば列車で通い、中国との関係を築き上げました。(金正日氏は飛行機嫌い故に列車だったと記憶しています。)が、正恩氏はプライドと子供っぽさを世界中に露呈しました。これは対話を重視する外交に於いて完全なる失策と言わざるを得ません。
「北朝鮮 次のステップを考える時」という題目は早すぎないか、と指摘されるかもしれません。が、私はそう思いません。今回の制裁は金正恩氏にとって正念場であることは間違いありません。コトは動く、私はそう見ています。
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 3月4日付より