なでしこが破れたのは「日本人」のせいだ --- 天野 貴昭

nadeshiko
▲リオ五輪が絶望的となった、なでしこジャパン(JFAサイトより)


一昨日のなでしこ対中国戦、大変残念な結果でした。

不用意なバックパスもさる事ながら、それ以上に「(しつこくプレスをかけると)不用意なバックパスをする事」を読まれていた様です。とにかく、とことん研究されていた様に思います。

「なら、バックパスをやめれば良いじゃないか! 」確かにそうですし、実際男子も前に進むサッカーを模索している最中でありますが、現状の日本のサッカーはバックパスからビルドアップすることでここまで登って来たと言っても過言でない現状もある訳で…なかなか一筋縄ではいかない問題なのです。

確かに澤選手の抜けた穴も大きかったのかもしれません

でも中一日の超過密日程の中、ケガを抱えた引退間際の選手を貴重な選手枠に入れる事が果たして良策だったでしょうか? 今回の予選を見ているとサッカーと言うより、まるでマラソンか陸上の中距離走を見ているようです。「とことん走り抜いて、バテてミスったら負け」という印象が拭えません。佐々木さんも充分それを予見していて、未熟でも体力のある選手を選出して来た様です。

強いて「たられば」を申すならば、澤選手よりも先日視力障害で引退した海堀選手の穴が痛かった様に思います。彼女がいれば、或いは韓国・中国戦でゴールマウスを守った福元選手とDF選手間でコンビネーションが組める時間があれば、韓国戦の2失点目と中国戦の1失点目はもっと違った展開になっていたと思うのです。

試合後の大儀見選手のコメントが印象的でした

「最初からこの試合にすべて懸けるつもりだった。自分としては準備もしていたし、試合中も諦めなかった」「ただ、その気持ちがチームとしてうまく機能しなかった。全員がそういう気持ちを持っていなかった。ベンチ、スタッフ、見ている皆さんも含めて。この結果を出ていた選手だけのせいにするのは簡単。そうじゃなくてこの原因をとらえて、次につなげていかないといけない」

野球が強いのは選手個人の能力もさることながら、解説者・そして何よりファンの目が肥えている事が大きいです。ホームランバッターやエースだけでなく、二遊間のコンビネーションや絶妙の送りバント、果ては球団運営・人事に至るまで、広く批判・賞賛をするクラスタがちゃんと培われています。

そういった「いぶし銀クラスタ」がちゃんと育って来ないと折角の良い選手もきちんと育っていかない、スポーツ競技は永久に文化レベルに発展していかない。そしてそれは選手だけの努力ではどうすることも出来ない。

選手は選手だけの力だけで成長することは出来ないのです。

大儀見ほどの選手が負け惜しみを語るとは思いがたいです。彼女が言いたかった事はこの様な事ではなかったのではないでしょうか?

勿論「オリンピックに日本選手が出場する事などどうでも良い」と思う方に何も強制は致しません。僕が今回訴えているのは、あくまで日本チームがオリンピックに出場出来る事を楽しいと思い、出場出来ないと悲しいと思う皆さんに対してのみです。

大抵の日本戦の敗因って「日本人」です。

日本スポーツ、特に団体スポーツで華開けるかどうかは、その競技全体が旧来型の「選手依存型」の体勢から脱却できるかどうかにかかっていると思っています。それは協会・メディア・ファンの力次第です。男子サッカーはドーハでそれに気づきましたが、なでしこについては今回がその契機ではないでしょうか。

皆さんはどう考えますか?

天野貴昭
トータルトレーニング&コンディショニングラボ/エアグランド代表