在米日本人が考える、トランプとサンダースの違いとは? --- 八幡 和郎

sanders vs trump

トランプ旋風は留まるところを知らず、共和党系エスタブリッシュメントでもロムニー前大統領候補のように猛然と攻撃に回る人もいるが、トランプ支持に回る議員も出てきて情勢は複雑だ。

こうなってくると、日本も余り歓迎するべき大統領候補でないとしても、トランプ大統領実現への心と政策的対応の準備が必要であるし、その前提としてなぜ彼がアメリカ人に受け入れられているかを知らねばなるまい。

一方、サンダース氏についても、クリントンがメール問題で自滅したときなどにはチャンスがあり、同様にフォローすべきだ。そんななかで、なぜか、黒人などマイノリティに人気がないというのは謎で、これも、理由を知りたいところだ。

そうしたところ、ニューヨーク在住で移民弁護士の脇田理彦さんが非常に興味深い分析をされているので、本人の了解も頂いて、本日の投稿の前文とコメントの一部を以下に紹介したい。ただし、趣旨を損ねない範囲で補足しているのでご了解いただきたい。

サンダースもトランプも実はニューヨーク出身である。サンダースはブルックリン生まれのユダヤ人で、人種隔離が合法だった時代に白人のみの学校で義務教育を受けて大学一年生の時に州外に転校しました。後に人口の1%しか黒人のいないバーモントに引っ越してニューヨークには帰って来てません。

トランプはニューヨークのクイーンズ出身です。クイーンズは人口の50%が外国生まれという恐らく世界で一番移民の多い地域です。トランプはペンシルベニアのウォートン校に行ったりしたががちゃんと卒業してニュ-ヨ-クに帰ってきました。

ビジネスでは移民ともうまくやっている様に見えます。よく調べた訳ではありませんが、アジア系の移民の間では日系も中国系もいずれもトランプの方がサンダースより好感度は高いのではないかと思います。大阪にたとえればトランプは在日韓国人の人などが多い生野出身で今でも大阪に住んでる不動産王みたいなものです。

サンダースは大阪生まれでもエスタブリッシュメントの多い北摂出身で今は関東に引っ越してして大学教授でもしている人のイメージでないでしょうか。

となると、どっちが非白人にとって信用できるのか考えてみると日本で報道されている程単純ではないようです。

アメリカは非合法の移民のほかに、毎年約100万人の合法移民を受け入れています。日本で誤解されてるかも知れないですがトランプは合法移民に賛成しています。現在毎年新たに約100万人ずつ外国人永住者を受け入れているのが、トランプが大統領になると私の予想ではこれが更に増えます(非合法を取り締まる代わりに合法枠は増やすと言うことか)。

アメリカの政治家がトランプの様にメキシコ国境からの密入国に反対するのは当然です。密入国者は不法移民です。ローマ法王の言葉に感化されてというわけでもないでしょうが、密入国者に橋をかけろと言う様な候補が現れてもアメリカで広く支持される訳がありません。

トランプは過激な言動は相変わらずだが、受け狙いもある。とくに、共和党では過激な右派だと思われた方が得らしい。ここ数日、ルビオがもっぱらやっているのは、「トランプはリベラルだ。本当の保守でない」という攻撃だ。

きょうも、テロ容疑者に拷問をする容認していたのを、ジュネーブ条約違反と指摘されたのを受けて修正したが、とくに、共和党内の指名にめどが付いたら、リベラル対策をしていくような気がする。

shouzou
八幡和郎  評論家・歴史作家。徳島文理大学大学院教授。
滋賀県大津市出身。東京大学法学部を経て1975年通商産業省入省。入省後官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。通産省大臣官房法令審査委員、通商政策局北西アジア課長、官房情報管理課長などを歴任し、1997年退官。2004年より徳島文理大学大学院教授。著書に『歴代総理の通信簿』(PHP文庫)『地方維新vs.土着権力 〈47都道府県〉政治地図』(文春新書)『吉田松陰名言集 思えば得るあり学べば為すあり』(宝島SUGOI文庫)など多数。


編集部より;この原稿は八幡和郎氏のFacebook投稿にご本人が加筆、アゴラに寄稿いただました。心より御礼申し上げます。