もうひとつ、憲法草案の第98条は以下のようになっている。「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」。続けて第99条に、「緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国、そのほか公の機関の指示に従わなければならない」とある。つまり、緊急事態宣言が発せられると、首相の権限が独走することになる。これは非常に危険な条文だと、僕は以前にも指摘した。
こうした緊急事態法は、フランスやイギリス、ドイツなどでも定められている。しかし例えば、ドイツでは、連邦議会などから選出された48人の合同委員会が設置され、委員会で承認された場合のみ発布されるのだ。緊急事態法が必要ないとはいわないが、日本もこうした歯止めを必ず作るべきだ。
さて、民主党と維新の党の合流が、いよいよ本決まりになった。野党が弱体化している今、野党が一緒になること自体には、僕は賛成だ。はっきりいえば、現在、民主党は野党第一党として機能していない。何より「対案」を出せていないからだ。昨年9月の安保法案議決の際も、党内で意見がまとまらず、対案を出せなかった。だから、民主党に対する国民からの支持率は、低下するばかりなのだ。一方、維新の党は、安保法案について対案を示したが、民主党と合流した場合、果たしてどうなるか。
民主党と維新の党は、合流したひとつの党として議論を重ねるべきだ。そして、独自の法案を国民に示してほしい。今、日本の憲法、そして安全保障問題は、大きな分岐点にさしかかっている。合流した2つの野党が、意見を集約させ、自民党に対案を突きつけることができるのか。ただ議席数を多くするための合流では、国民にとって何の益もないのだ。
編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2016年3月7日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。