軽減税率で飲食店の現場オペレーションの混乱が懸念される(Wikipediaより、アゴラ編集部)
昨日、予算委員会に立ち、①「軽減税率」と②「核燃料サイクル」の2つを質問しました。
そのうち、軽減税率については、イートイン(10%)とテイクアウト(8%)で税率を分けることによって出てくる問題について、岩城法務大臣を中心に刑事責任との関係を尋ねました。
一点目は、お釣りの間違いについて。
『ハンバーガー店でイートイン用に1000円のハンバーガーセットを買ったお客様がいたとします。税込みで1100円の代金を払ったところ、店員が間違って20円を返してきました。
お客様が、それを店員のミスと分かりながら、受け取ってポケットにいれた場合、これは刑事責任が問われないのか?』
岩城大臣の答弁は、「犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠によって認定される事実に基づき、個別に判断される事柄でありますので、お答えは差し控えさせて頂きたい」というものでした。
これくらい典型的な一般事例をお答え頂けなかったのは残念でしたが、これはいわゆる「釣銭詐欺」と呼ばれるもので、詐欺罪が成立すると言われています。現に逮捕例もあります。
二点目は、嘘の申告について。
『1000円のハンバーガーセットで、最初からイートインのつもりなのに、テイクアウトだと嘘をついて、1080円で会計をする(20円の支払いを免れる)。これは何か刑事責任が問われないのか?』
こちらに対しても、答えられないという答弁でした。ただ、一般論として、人を欺いて財物を交付させた場合には詐欺罪が成立することはお認めになりました。
最初のケースが釣銭詐欺で、お釣りが多いことを申告しなかったという「消極的」なものであるのに対し、二番のケースは「積極的」に虚偽の申告をしているわけですから、こちらも詐欺罪が成立するはずです。
つまり、テイクアウトと嘘をついて、イートインしたお客様がいた場合、「逮捕」もありうるということです。
(軽減税率の導入によって、あらたな犯罪が生まれる可能性があるのです。)
先日、最近はやりの高級ハンバーガー店に行って、4人分の購入をしたら1万円にもなってしまいました。店内か持帰りかで、消費税が1000円と800円の差の200円になるわけですから、大きいですね。下手なポイントカードでポイント集めるより、一回、誤魔化した方がお得ということです。
今までの国会での軽減税率における議論は「店員さんが困る等の、オペレーション上の問題」を取り上げたものが中心でしたが、このように刑法上も「詐欺罪」等の可能性が出てくるということを、国民の皆さまには認識して頂きたいと思います。
捕捉するのは難しいですが、消費者も軽々しく誤魔化していたら、いつか逮捕されてしまうかもしれないのです。
また、想像して下さい。「得をしよう」と深く考えずに誤魔化す大人たちをみて、子供達がそれを真似する可能性も出てきてしまいます。
そこから、コンビニやファーストフード店で「消費税を誤魔化すこと」が日常茶飯事になってしまうかもしれない(店側もなかなか、お客様を注意したり、追及したりすることは出来ません)。
そうなると、「税金は誤魔化すものだ」という考えが自然と蔓延してしまい、長期的に日本にとって大きなマイナスになります。
教育的にも良くありません。
このことについて、安倍総理にどう思うか尋ねました。
それに対する答弁は、「テイクアウトするよといって、お子さんがそこで食べていれば、それは間違っていると注意するのが大人の義務であります。そうやってルールを学びながら育っていってもらいたい」というものでした。
おっしゃることは全くその通りなのですが、それは理想論にすぎないと思います。そもそもズルをしている大人は誰が注意するのでしょうか(多くの方はトラブルに巻き込まれたくないと思い見て見ぬふりをしてしまうのではないでしょうか)。総理は、そう簡単に誤魔化そうということが蔓延するとはなかなか考えられないともおっしゃっていましたが、イギリスでは実際にそのようなことが起きて不公平だという声が上がり、標準税率が適用される外食サービスと軽減税率が適用される食料品の区分けの基準が、「気温より高く温められたかどうか」に変更されたのです。
分かりづらく、あやふやで、不公平なのが「軽減税率」なのです。
やはり、いったん消費税増税そのものを先送りすることを決めて、本当に増税すべきなのか、増税の際の低所得者対策としては何がベストなのか、マイナンバー制度を活用した給付付き税額控除の可能性等も含め、今後、時間をかけて検討していくべきなのです。
編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年3月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。
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