以下は、主要先進国における死んだ場所である。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000105vx-att/2r98520000010l2r.pdf
スウェーデン、オランダ、フランス、日本と比較すると、日本だけが突出して病院死が多い。
昔からこうではなかった。1950年代までは、日本人の8割が自宅で死んでいたのに、今は8割が病院で死ぬ。
単なるお看取りのために、医療資源が浪費される現状は問題である。特に、救急外来とICUが、お看取りのために使われてしまうことは好ましくない。治療可能性のある患者が後回しにされて、死んでしまうからである。
終末期患者が自宅で生活することは難しいので、患者はすでに何らかの介護施設に入っていることが多い。
日本の特徴は、すでに介護施設に入っていても、最後は病院に収容されて死ぬことである。
状態が悪化すると、本人も家族も、ほとんど全員が、病院へ行かせてくれと言う。終末期の苦痛や恐怖は、入院すると避けられると思っている。
残念ながら、違う。病院でしかできない緩和ケアはないし、病院に入ると余計に苦痛を味わう。
鎮痛薬は病院以外でも使える。呼吸困難感はモルヒネで緩和できる。人工呼吸は苦痛を長引かせるだけである。脱水を防ぐと称して輸液をすることがあるが、血管に針を刺されること自体が苦痛である。中心静脈栄養や経鼻栄養や胃瘻栄養で延命をして、喜んだ患者や家族は見たことがない。
終末期における入院治療は、医療費を浪費し、患者にも家族にも何ら利益はない。体験すればわかる。誰もが病院で死ぬなんて懲り懲りだと思う。
しかし、お看取り救急(入院)は今後も増えるだろう。なぜなら、自分の死は一度しか体験できないし、家族の死は、1つの家庭内では20年から30年に1回しかないから、忘却され、その経験は、次の世代に引き継がれないからである。
政府による受診制限が必要である。すでに、特定機能病院の初診については、紹介状がなければ、特別初診料を取られるというペナルティがあるが、現状はせいぜい5000円であり、制限になっていない。
かかりつけ医を地域や施設ごとに決めて、彼らを病院受診の門番としなくてはならない。かかりつけ医の判断については、事後的に保険者が審査すればよい。
井上晃宏(医師)