セイノーHDが、学生と新規事業開発へイベント

「伝統的な地場の織物技術を活用し、海外でも通用するジャケットを開発しインターネットで世界に販売していきたい」「クラウドファンディングを活用し、地域の町工場のブランドを確立し活性化したい」「スマホアプリを開発し、寄付付きの社会貢献型観光ナビを展開していきたい」…都内で、全国から集った大学生たちが地方創生をビジネスで実現したいと熱を込めてプレゼンした一コマだ。

(優秀賞を受賞した大塚眞さん:千年の歴史ある染織産業を「もう千年続く産業」へ)

西濃運輸を中心とした陸運大手・セイノーホールディングス(岐阜県大垣市)が主催した 地方創生ビジネスプランコンテスト「カンガルー」には、短い告知期間にもかかわらず、北海道から沖縄まで全国81組の大学生らからアイディアが寄せられた。

最優秀賞に選ばれたのは島田舜介さん(岡山大学環境理工学部3年)岡山県倉敷市児島の特産である国産ジーンズを盛り上げていきたいと「EVERY DENIM」プロジェクトのプレゼンテーションだ。WEBマガジンを通じた情報発信と、クラウドファンディングを活用した新商品の開発・販売といったプランを発表し、すでに動き出している地域に密着した地道な取り組みと、地方創生の可能性を感じさせるといった観点からの受賞となった。

島田さんは「受賞を通して自分たちの活動が発信されることで、瀬戸内のデニム工場が注目されるようになるのが何より嬉しいです。賞金は、多くの人に商品を手にとっていただけるフィッティングルームの開設費用に充てさせていただきます。」と喜びの声。

ビジネスプランコンテストそのものは、創業支援を行う産業支援機関やアイディアを欲する企業などが実施し、決して珍しいものではない。実際「ビジネスプランコンテスト」と検索をすればたくさんのサイトがヒットする。
しかし、「地方創生」をテーマにしたビジネスプランコンテストは珍しくまた、民間企業が主導して実施するのはなぜか?運営事務局を主導する、セイノーホールディングス・渡邉久人氏に話を伺った。

ーーなぜ、セイノーHDでこうした取り組みを行うのか?

当社は1930年、岐阜県下呂市に創業者、田口利八名誉会長がトラック一台で興した田口自動車が始まりです。1933年に大垣市に移転し、その後戦争が始まり軍用に徴用されるなどを経て、1946年、水都(すいと)産業株式会社という名前で、トラック38台で設立されたのが西濃運輸です。つまり日本の戦後の復興においては輸送なくしてありえないとの考えに立ち起業。
そこから日本一のトラック運送会社となりました。

その意味では、当時のベンチャー企業であったといっても過言ではありません。創業から70年がたち、皆様のおかげでセイノーホールディングスとしては5,000億円企業となりました。しかし、このままでよいかというとそうではありません。超高速・超複雑といわれる今日において、絶えず時代の流れを読み、環境変化に適応していかないと企業の存続が危ぶまれる状況です。
その意味において、若くて次世代を担う若い人たちの目線で、「地方創生」をテーマに様々なアイデアを募り社内に取り入れることなど行い、社内の活性化につなげたい、あるいはそうしたアイデアをもった若者を招き入れたいとの思いでこうしたコンテストを企画しました。
ーー実際に取り組んでみてどうだったか?

前述の通り、当初40件程度の応募もあれば、まずますとの思いでしたが実際には81件の応募となり、予想の倍の結果となりました。どのアイデアも真剣に「地方創生」について向き合い、社会解決を行おうとする熱いいエネルギーのこもったものばかりであり、ファイナルプレゼンテーションに全員参加いただきたいほどの内容ばかりでしたが、やむなく9件をファイナリストとし、プレゼンテーションを行うこととなりました。

81組のご応募は全般的に、かなりクオリティの高いアイデアをいただいております。
特に、ファイナリストに残った多くの方は、既に実際の事業を始めておられる方も多く、パートナーとしての関わりやアイデアを参考にさせていただくなどの期待を持っています。
また、採用面での効果があれば大変ありがたいです。
先述の通り、創業者が社会の課題を解決するとの志にてこの会社を興したわけで、本来DNAを私どもも保持しているのですが、なかなか、その当時のチャレンジ精神に持つに至っていません。ぜひとも私どもとしては、今回の課題発見を行い、課題解決を行おうとする有望な若い人たちに仲間になっていただき、今考えているビジネスプランを発展させるあるいは当社のアセットを活用しながらもいろんな新しいことににチャレンジするということも考えていたきたいと考えています。

地域や社会の困り事、課題に事業的手法で応えていきたいと熱意持つ若者たち。そしてそのアイディアや思いを活かし、組織変革や新規事業に活かしていこうという企業の存在。
こうした主体的な連携が、新たなビジネスを生み出すことにつながっていくだろう。

24社のベンチャー企業がそれぞれの専門性を活かし地域活性に取り組んでいこうという「熱意ある地方創生ベンチャー連合」など、ビジネスサイドからの取り組みも活発化している。
政府主導だけでなく、こうしたビジネスセクターや、若者の力を活かした取り組みがますます広がっていくことを期待したい。

秋元祥治

NPO法人G-net代表理事・滋賀大学客員准教授・OKa-Bizセンター長