詐称問題の本質はコンサルタントの理解と嫉妬である

 経営者セミナーで講演中の筆者。於:横浜市開港記念会館

今回の詐称問題の潜在的な問題は、実はコンサルタント業務の実社会での認知に起因している。また詐称があったとはいえ、今回のメディア報道には違和感を感じている。

●コンサルタントの実務を知らない人たち

ニュースで脱税や金銭がらみ事件が発生すると、コンサルタントやコンサルタント会社が絡んでくることが多い。よって職業として「コンサルタント」と答えるとあたかも悪いことをしているような印象で受けとめられることがある。たしかに経営コンサルタントと聞くと、なにをしているのかわかり難い。

一般的な会社には様々な職務が存在する。営業、販売、宣伝、広報、購買、研究開発など職務に応じて部門がわかれている。しかしコンサルタント会社の場合には職務が明確にわかれているケースは少ない。大ぐくりに、フロントオフィス、バックオフィスにわかれていることがあっても、職務自体はコンサルタント一本である。

「コンサルタントは責任をとらない」「最後まで仕事をしない」との批判も多い。RBV(resource-based view)中心の時代には、企業の内部資源を活用することに主眼が置かれていた。この時代は「何をやるのかという戦略」が中心だったので「戦略を描くこと」が重視された。「戦略を描くこと」が仕事なわけだから「コンサルタントは責任をとらない」「最後まで仕事をしない」という表現になるのだろう。しかし、これは過去のトレンドの話である。現在は、インプリメンテーションや組織や人材にシフトをしてきている。

また、コンサルタントは名乗るにあたって、特に資格が必要なわけではない。具体的な職務を曖昧にできるので言葉としても使いやすかった。多くの会社でコンサルタントを標榜することでかえってコンサルタントの仕事がわかり難くなってしまったように感じている。

●コンサルタントは警戒されやすい

企業規模や形態、各々のスタイルによって異なるが、私はコンサルティングを実行する際、もっとも留意すべきは顧客の上層部と考えている。経営者(社長)と握ったとしても、現場の協力が不可欠になるからである。経営者が握ったコンサルタントは、社内の改革を期待されていることが多い。コンサルタントは、彼らの業務を改革する当事者であり、地位を脅かす危険な存在だから警戒をされる。あらゆる妨害にあいスポイルするチャンスを狙っていることもある。

あらゆる妨害の中身だが、例えば、販路開拓のコンサルを請け負ったとしよう。販路開拓先の役員会で社長を交えた報告会の機会を得たとする。しかし、報告会を無断欠席したり、必要な資料を持参しないなど想定外の出来事が発生することがある。また、セミナーや講演も要注意である。顧客への案内ミスや場合によっては会場が抑えられていないこともあるから入念なチェックが必要になる場合がある。

それでは実務の内容だ。大企業の場合、1人のコンサルタントに全てを任せることはしない。各々の特性に応じて複数社に発注するのが一般的である。一方、中小企業の場合は経営に関する実務全てを任せられることがある。中小企業でも正常先に分類される企業ではなく、要注意先、破綻懸念先として評価される企業はコンサルタントの力量が影響を及ぼす。

実は会社業績を好転させる方法は3つしかない。1つ目は売上高を増やすこと、2つ目はコストを下げること、3つ目は限界利益率の改善である。限界利益率は「(固定費+利益)÷売上高」だから限界利益率が利益幅を表していることがわかるだろう。また、コンサルタントによって見るべきポイントが異なるが、私はまず内部留保をチェックするようにしている。内部留保が多い会社は「比較的金儲けが上手い会社」と判断できるからだ。また、営業残や売掛などもチェックポイントだ。

●コンサルタントはパートナーである

財務チェックをして資金が必要な場合は、銀行に掛け合うことも重要な作業になる。取引窓口が銀行の支店でなかなか動きそうにないなら、本店と取引がある上場企業の元役員などにパイプをつないでもらうこともある。返済に困ったらリスケ(reschedule)による債務返済を繰り延べる作業をしなければいけない。事業計画書作成などもコンサルタントが請け負うことが多い。コンサルタントとは決して無責任な存在ではなく、企業が永続的に発展するために存在するパートナーであると考えている(違う場合もあるかも知れませんが)

さて、今回の詐称問題に対する報道に対して、私は批判的立場を取る。メディアに出演する、評論家、タレント、コメンテーター、その多くは、何らかの「盛り」を行っていると考えている。強引な言い方をすれば、全ての広告類も実態をより良く見せようとしているわけだから同様である。

盛るという行為は、事実を曲解することだから同じ意味に近い。自分の経歴や実績に盛ったことはないのか。誰にでも思い当たるフシはあるのではないかと思う。今後、コンサルタントやコンサルタント会社の話題があがったら、どのようなコンサルタント業務なのかを鳥瞰するとさらに理解が深まるのではないかと思う。

尾藤克之
コラムニスト