憲法改正より大事なアジェンダ設定

ブログに書いたケント・ギルバートのケースは例外ではない。朝日=日教組的な歴史観に疑問をもった人には「アノ手」のメディアから注文が来て、講演の依頼も増える。田母神俊雄氏は、講演料だけで年間1億円を超えるそうだ。

この商売は同じ話を全国各地で繰り返せばいいので、楽で抜けられなくなる。西部邁氏なども最初は経済学の話をしていたが、「朝まで生テレビ」で悪役を演じてから講演の依頼が増え、右派系編集者の金でヤクザを連れて飲み歩くようになった。


単純化して図示すると、こんな感じだろうか。こうした対立はどこの国の政治でもあるが、日本の特徴は一国平和主義の憲法を守ろうという勢力がいまだに過半数を占めていることと、「小さな政府」派がほとんどいないことだ。日経に代表される財界や維新に代表される若い世代には少し支持層があるが、政治勢力になっていないのでマスコミにも出ない。

国会で繰り返される論争のほとんどは、上の二つの勢力の憲法論争で、ほとんどの国民には興味がない。こんな中でケントのように右上の端っこの議論をしてみても、何も変えることはできない。朝日新聞が嘘つきなのは誰でも知っているが、右上の国家社会主義(バラマキ財政やリフレを好む)よりましだと思っているから、世の中は変わらないのだ。

しかし最近は、朝日より質の悪い古舘や岸井などの極左的アジテーションが出てきたので、さすがに切られた。これは右派の勝利ではなく、今の民放の経営陣は団塊の世代より2世代ぐらい下だから、彼らの空想的平和主義にうんざりしてきたのだろう。

最大の問題は憲法ではない。もちろん改正したほうがいいが、日米同盟がある限り、中国が攻撃してくることはないだろう。緊急の問題は、これから急速に膨張する社会保障給付をどう抑制するかだが、与野党ともに「大きな政府」の家父長主義なので、論争にならない。維新でさえ社会保障の削減はいわない。

だから本質的なアジェンダ設定は、右か左かではなく大か小かなのだ。そういう転換のできない民進党はこの夏で解党してもらい、右下の無党派層を代表する勢力を増やしていくしかない。このグループは国民の過半数なのだが政治勢力としてまとまらないので、この闘いはあと10年はかかると思う。