民進党は、本当に成功するのか?

田原 総一朗

tahara27日、民進党の結党大会が開かれた。代表は岡田克也さんだ。代表代行には、江田憲司さんが就任した。野党第一党がスタートをきったのだ。民主党が維新の党と合流して、民進党に生まれ変わる最大の理由は、もちろん7月に控える参議院選挙で有利に戦うためだ。では、民進党は果たして次の選挙に勝てるのか。

次の選挙は、夏の参院選だ。民主党の改選は42議席。これは、6年前の参院選で当選した議席だ。ちょうど、菅直人内閣のときに与党として獲得した議席数である。つづく3年前の参院選では、民主党は野党になっていた。代表は海江田万里さんで、改選議席は44。だが、獲得した議席は17議席だった。こうした経緯をふまえて、民主党の執行部からは、「改選議席42のうち39取れれば上出来」という声が出ているようだ。だが、実際は20議席も取れないのでは、と不安視する声も上がっている。

彼らの不安を裏付けるような世論調査の結果が出ている。朝日新聞社が3月12~13日に実施した調査だ。この調査では、民進党に「期待する」は31%、「期待しない」は57%だった。読売新聞社が3月4~5日に実施した世論調査でも、「期待する」は31%、「期待しない」は60%だった。国民の目には、民進党の結成は、「選挙のための合流だろう」というのが透けて見えるのだろう。だからこの合流で、とうてい日本が変わるとは思えない、というわけだ。

民主党と維新の党の合流を成功させるには、国民が納得する政策を打ち出せるかどうかが鍵になる。たとえば政策面を見てみよう。安全保障に関しては、民主党と維新の党の間にそれほど大きな政策の違いはない。安保関連法や集団的自衛権の問題については、ほとんど意見が一致している。安保関連法について、両党とも「後方支援はするが、周辺事態法の枠だ」と主張しているのだ。要するに、安倍内閣は周辺事態法を改正し、地球の裏側まで行けるようにしたが、民主党と維新の党は、「周辺」に留めるべきだとする。

集団的自衛権の行使についても、今のところ両党とも「米艦防護」は認める方向で考えている。朝鮮半島で戦闘が起こった場合、米艦が北朝鮮や中国から攻撃されたとき、日本は防護するというものだ。これが唯一の「集団的自衛権の行使」だという主張だ。

問題は、経済政策だろう。民主党内部では、貧富の格差を広げたアベノミクスは失敗だという声が多い。当然、次の選挙では、民進党の政策に「経済の成長」ではなく、「格差是正」を掲げるべきだという意見がある。しかし、一方、同じ民主党内に「経済成長」を入れ込むべきだという意見もある。成長がなければ格差是正もできない。「格差是正」を強調し、「資本主義は終わり」だという考え方は左翼的過ぎるというのだ。

このように、「経済政策」の面で、民主党は2つに分かれている。党内の意見もまとめられないのに、維新の党と合流し、民進党として経済政策をまとめることができるのか。経済政策は国民にとって生活と直結する。

これらの問題は、「民進党」成功にとって非常に大きなテーマだ。万が一、参院選で民進党の改選が20議席にも届かないとなるとどうなるか。岡田代表が辞任するなど、「一波乱」が起きる可能性があると僕は思っている。ただ、なによりも問題なのは、そもそも、この政党自体に求心力がないのだ。これは、容易に解決しない問題だろう。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2016年4月4日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。