共産党と組む民進党に今回だけは投票しない運動を

八幡 和郎

共同通信の試算によると「民進、共産、社民、生活の野党4党で次期衆院選の小選挙区候補を一本化したと仮定し、2014年衆院選結果に基づき得票を合算すると、4党で小選挙区定数295のうち113議席の獲得が見込まれることが、分かった」と東京新聞など各紙が報じている。

しかし、各党の得票がそのまま野党統一候補に投じられるという試算に何の意味があるのか疑問だし、そんなものを当然に予想される結果のように報道するマスコミもどうかしている。。

私は個人的には確定的な支持政党を持たない。毎回、投票する政党は違う。そして、選挙のときに、「どのように投票すべきか」とマスコミに問われれば、「まず、望ましい各党の勢力分布がどのようなものかを考え、それに少しでも近づくように投票する」ことを勧めている。

もちろん、選挙区によってどこの党に投票するべきか変わってくる。当選の可能性がない候補には投票しても意味がないが、衆議院選挙の小選挙区の場合には、惜敗率による当選可能性も考えることになる。

しかし、この夏の参議院選挙や、もしかすると行われるかもしれない同日選挙の場合には、もし、野党連合に共産党が加わるなら絶対に投票しないように呼びかけたい。

それは現在の与党のためではなく、むしろ、政権交代可能な責任野党を育て、無原則に自民党永久政権を容認しないための近道だと信じる。

「現在のままの共産党」を当てにした野党連合は、政策的に共産党の思惑の縛りを受けるし、それは、今回の選挙の時だけではすまないだろう。そうすれば、かつての社会党のような三分の一程度の議席が壁になる永久野党への道まっしぐらだ。

そして、たまたま、自民党の大スキャンダルなどの結果として、フロックで政権をとっても外交関係も含めて惨憺たる結果になって、国益を害し、何も出来ずに短期政権で終わるだろう。

もし、政権交代可能な二大政党のひとつに民進党がなろうというなら、欧米的な基準の自由と民主主義から逸脱する勢力と手を組まないように望む。

民進党の一部やマスコミなどでは、民進党のなかの左派を「リベラル派」、右派を「保守派」などと呼んでいる。しかし、世界標準でのリベラルは、左派でなく中道派のことだ。イギリス労働党のブレア元首相、フランス社会党のバルス首相、ドイツのシュレーダー元首相、イタリアのレンツィ首相らは、党内から「彼らはリベラルだ」と批判され、ソーシャル・リベラリストといわれている。リベラル派と自称するのは国際的には極左と呼ばれる人たちだ。

私は共産主義の歴史についてすべて否定的なわけではない。共産主義があったからこそ、欧米も日本の保守主義者も社会政策などを進めざるを得なかったし、植民地の独立も実現した。

また、多くの国で共産党が西欧民主主義の原則や防衛政策を共有する別の名の党に生まれ変わって政権参加もしているのである。しかし、共産党という名称を保持し、第一段階の民主主義革命では西欧民主主義の原則や現行憲法をようにするが、第二段階でめざす社会主義革命段階ではどうするつもりか口を濁す現在の日本共産党は自由と民主主義に敵対する政党であるし、それとの共闘に民進党はいっときの安息を求めるべきでない。

民進党や社民党は、共産党を糾弾してその勢力を切り崩すことで勢力を拡大し、二大政党としての基盤を築くべきだ。また、共産党も、その歴史的役割まで否定しろと言わないから、第二段階とやらを放棄して、西欧的な左派政党となるなら、そのときは、政権参加でも何でもすればいいと思う。

きたるべき選挙では、相当数の民進党シンパの人が「(共産党と協力するなら)今回だけは民進党に投票しない運動」をすることこそが、悪の道に迷い込みかけている民進党を救うだろう。

八幡和郎
イースト・プレス
2015-10-10

 


編集部より;この原稿は八幡和郎氏のFacebook投稿にご本人が加筆、アゴラに寄稿いただました。心より御礼申し上げます。