都合の悪いことはすべて参院選後に先送りか

玉木 雄一郎

TPP交渉 過度な情報隠ぺい

4月7日、TPPの審議が衆議院のTPP特別委員会で始まり、野党のトップバッターとして質問に立ちました。

TPPの合意内容が国会決議に合致したものか、本当に国益にかなうものなのか、交渉過程も含めて吟味しないと責任ある判断はできません。そこで、政府が交渉に関して作成したという「論点ペーパー」を提出して欲しいと要求したところ、政府から出てきた資料はすべて黒塗りで、まるで「のり弁当」のような状態。

私たちも、外交交渉上の文書の開示に制約があることはよく分かっています。しかし、句読点も含めてこれほどまでに真っ黒に塗りつぶすのは、過度な隠ぺいだと言わざるを得ません。

さらに問題なのは、国会や野党に対して黒塗り資料で情報をヒタ隠しにする一方で、西川TPP特別委員長は、交渉の内実を記した本を法案通過後に発売しようとしていました。そして、その原稿案と思われる文書を入手し、ご自身が書いたものかと質問しても認めようとしません。しかし、4月8日、国会の審議が中断している際に、自民党議員とのヒソヒソ話がマイクに拾われ、そこでは自分が書いたものだと認めるような発言をしています。

こんなウソや情報隠ぺいだらけでは、まともなTPP審議は出来ないということで、審議が中断となりました。しかし、私たちも早く中身の議論をしたいので、15日から再開することになりましたが、驚くことに、4月13日の読売新聞朝刊が、法案成立を参議院選挙後に先送りすると報道しました。

まだ、実質一日しか審議していないのに、早くも先送りとは理解できません。そもそも、「アベノミクスの切り札」とまで豪語していたのに、選挙にとって不利だと思って法案成立を先延ばしするのでしょうか。そして、参議院選挙が終わってから、問題の委員長も大臣も入れ替えて、何事もなかったように成立させるつもりなのでしょう。そんな身勝手を許すわけにはいきません。

年金運用5兆円の巨額損失隠し

また、4月7日の国会では、年金の運用についても質問しました。というのも、平成26年秋、安倍内閣は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用を見直し、これまで最大24%だった株式投資比率を50%にまで拡大させました。この見直しを行ってからはじめて一年間を通じた運用成績が出ることになるわけですが、私たちが心配しているのは、昨年夏以来の大幅な株価下落によって、平成27年度一年間で、約5兆円規模の運用損が発生していると見込まれていることです。複数の専門家も同様の試算を公表しています。

要は、アベノミスクの成功を演出するため、国民の年金資金を使って株価をつり上げようとしたものの、そのことが裏目に出て、巨額の損失が発生しているのです。もし運用の見直しをしていなければ、損益はプラスマイナスゼロだったとの試算もあります。国民の年金を使ってギャンブルするようなことは、即刻やめさせなければなりません。

しかも、政府は、この巨額損失の公表を参議院選挙後の7月29日まで遅らせ、国民から隠そうとしています。あってはならないことです。平成27年度の運用成績は、例年どおり7月上旬の参議院選挙前には公表し、国民の審判を仰ぐべきです。

なぜなら、GPIFのお金は国のものでも、ましてや安倍総理のものでもありません。まぎれもない国民の資産なのです。受託者としての責任を果たすうえでも、GPIFは参議院選挙前に平成27年度の運用成績を公表すべきです。さもなくば、「年金5兆円の巨額損失隠し」との批判は免れないと思います。

TPP関連法案にしても、年金の巨額の運用損にしても、安倍政権は、都合の悪いものをすべて参議院選挙後に先送りしようとしています。

情報を操作すれば、国民を騙せると思っているのかもしれませんが、そんなことはさせません。通常国会の会期も2か月を切りましたが、適切な情報開示を政府・与党に厳しく迫っていきたいと思います。


編集部より:この記事は、衆議院議員・玉木雄一郎氏の公式ブログ 2016年4月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。