自治体のアンテナショップは東京の不動産会社のカモ

井上 貴至

東京都心で、自治体の「アンテナショップ」が空前のブームを迎えている。かつては都道府県単位が中心だったが、現在は市町村も開設。地方創生の上乗せ交付金/加速化交付金などを活用して新たに開設した/するところも少なくない。
しかし、自治体のアンテナショップ。
実は、東京の不動産会社からすれば、1番のカモだという。

◆田舎の自治体は、東京の土地の相場がよく分からない
◆町のPRのため、赤字でもかまわない

ということが大きな理由と考えられる。

この「赤字でもかまわない。」という姿勢は、ときに大きな問題を孕む。

むろん、自治体の事業は、「「赤字」だからダメだ」というわけではない。選挙や福祉、教育などはその典型だろう。民間事業者だけでは供給されないが、社会として必要なものを提供するのが自治体のそもそもの役割。その意味では「赤字」だからこそ自治体がやるものだともいえる。

しかし、 それゆえに、費用対効果については「自ら厳しく不断に」見直さなければならない。民間の事業は市場の中で自然に淘汰されるが、自治体の事業はそうではないからだ。

A市等が、地方創生の上乗せ交付金を活用して、今年3月末に赤坂にアンテナショップをオープンした。その家賃は新聞報道によると、月270万円だという。これから毎年、家賃だけで3240万円かかることになる。黒字化することは相当難しいだろう。

町をPRして町の特産品を販売するという「目的」はよく理解できる。しかし、その「手段」はアンテナショップに限られないし、アンテナショップより費用対効果が優れたものがあると僕は思う。

例えば、「長島大陸ブリうま食堂」。長島大陸の特産のお弁当をのせて、東京中を走り回るキッチンカーだ。3月末の開業から2週間、おかげさまで日に日にお客さんが増えている。


(人気の赤坂サカスにも出店。テレビでも大きく報道された。)

キッチンカーの拠点自体は東京郊外なので、駐車場や食材の下処理、店長の住宅スペースを入れた家賃が月10数万円で済むのが1番の魅力。加えて、開店に際しても、東京都心の商業用店舗では20か月程度の保証金・敷金がかかるが、住宅ではそれらがほとんどかからない。また内装費も、店舗より車の方がはるかに安い。

キッチンカーでは、通常、イベントごとに売り上げに応じて出店料が概ね15%程度かかるが、トータルのコストはアンテナショップより一ケタ以上安価で、収益も高く、単体での黒字化も十分に見込める。

更に、キッチンカーは、一か所にとどまるアンテナショップと異なり、東京中を走り回るので、それ自体がものすごい宣伝になる。実際、長島の海をイメージした「長島大陸ブリうま食堂」のビビッドな車体が信号で止まっていると、写メを取り、SNSでシェアする人も少なくない。例えば、東京の地下鉄で1週間車内の吊り広告を出すと100万円は下らないから、その効果はとても大きいだろう。

ということで、町をPRして町の特産品(食品)を販売するという「目的」を達成する「手段」としては、アンテナショップよりキッチンカーの方がはるかに優れていると僕は思う。

もし、仮に、

◆アンテナショップがブームらしいから(=思考停止)
◆隣の××市がアンテナショップをオープンしたから(=虚栄心)

という考えで始めようとするならば、とりうる「手段」は曇り、歪められてしまう。その上で、こうした「思考停止」や「虚栄心」が、自治体の事業は「赤字でもかまわない」という考えと結びついたならば、その事業は間違いなく失敗する。もはや税金を垂れ流すしかなく、地域にとっても日本にとっても損失だ。

「目的」を見据えて、「手段」は柔軟に考えることが何より重要ではないだろうか。

ちなみに、今回、「長島大陸ブリうま食堂」を総合プロデュース(機器購入、デザイン、料理監修、採用、研修、保健所の許認可など)してくださったのは、株式会社マインドシェアさんです。

前にも書きましたが、長島町は「パクリ大歓迎」。
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キッチンカーも、いい感じで増えていけばいいなと思っています。

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