ホンネで語る!人事座談会〜即戦力人材の最適配置 --- HRレビュー

アゴラ

転職マーケットは売り手市場が続き、優秀な人材の流動化はますます激しくなっています。企業側は、採用力はもちろん、採用後の人材配置、成果をあげるマネジメント力を強化することが非常に重要になっています。
座談会後編では、人材の最適配置について、従業員約50名のベンチャー企業から1,000名以上の企業までの人事・採用担当4名にそれぞれの考え方を語っていただいています。

※本記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」からの転載PR記事です。

>人事座談会【前編】即戦力人材の採用成功の記事はこちら

**座談会メンバープロフィール**
三井氏(仮名)
IT関連企業(従業員:約1,500名)の採用担当

安田氏(仮名)
サービス事業を手がけるベンチャー企業(従業員:約50名)の人事・採用担当

小林氏(仮名)
ソフトウェア会社(従業員:約200名)の人事・採用担当

稲垣氏(仮名)
ECビジネスを手がけるベンチャー企業(従業員:約100名)の採用担当

人材の最適配置には、人事のフォロー体制が大切

――これまで、即戦力人材の“採用”フェーズについて語っていただきましたが、ここからは、人材の最適配置について、皆さんの考えをお聞かせください。

小林:急成長中のベンチャー企業でよくある配置ミスは、「非常に優秀だから、まずは採用しよう。ポジションは入社してもらってから考えよう」というケース。取締役直下に新部署をつくって配置してから、最適な部署にランディングさせていくといった場合、人事のケアがなければ、士気が下がりやすい。フォロー体制をしっかりつくっておくことが非常に大切です。

安田:その転職者が社風にうまくフィットしたり、成長中の組織に属することに価値を置けたりすると、ポジションやミッションがあまり明確じゃなくても、機能するかもしれません。ただ、業務内容や評価軸ははっきりさせる方が失敗は少ないでしょうね。

小林:本人も「自分は何のために採用されたのだろう」と思い始めるし、採用プロセスを知らない周りの社員も「あの人は何しに転職してきたのだろう」という目で見始める。そうなると、辞めるのは時間の問題です。

三井:採用人数ノルマに追われて、採ることしか考えていない会社でも、よく起こりますよね。「とりあえず採用しよう。仕事は何かあるでしょう」と楽観的に捉えていたら、その方にマッチする業務がなかった……とかね。実体験ですが、「この職種でこの方は採用できない」とフィードバックしているのに「じゃあ、他にポジションはありませんか」と、何としても採ろうとする採用メンバーもいました。

安田:実は、私は当社に社員紹介を通じて入社したのですが、最近注目度の高い「社員紹介」という方法においても、会社側のフォローはとても大切だと思っています。自分自身で立ち位置をつくっていけるようにサポートしないと、独り立ちできずに、逆に社員紹介での入社があだになる時もある。私の場合、紹介者に頼り過ぎてしまったことや、顕在的にあったポジションで入社したわけではなかったこともあり、しばらくはふわっとした感じで存在していました(苦笑)。その後、何とか自分の立ち位置を築けたことで、そういった状態は解消されましたが、最初の数カ月は大変でしたね。思い出したくもない(笑)。

小林:ベンチャー企業にありがち! 創業オーナーの一声で採用して失敗するケースもよくありますよね。

安田:当社も過去を振り返ると、数カ月で辞めてしまうメンバーがいました……。もちろん、現在はそういったことはないです。

稲垣: 当社も、創業期はいろいろと経験をしましたね。「人が足りない。今欲しいからすぐ採ろう。予算はあとで何とかすればいい」と候補者を一定程度は選考していたものの、詳細を吟味せず採用して、結果として力を発揮させることができず、社員も急な人材配置で受け入れ方が分からないという負の連鎖です。結局お互いにとって良くない状況を生むので、あらためて全体感を持って、採用プロセス設計から経営陣と議論するようになりました。

人材育成にコミットさせる。社員にその役割を課すことが大事

――人材の最適配置のために、どのような工夫をしていますか。

三井:当社は、入社後半年間は「これまで経験してきたことで力を発揮し、社内で認めてもらう期間」と設定しています。人材を採用し、中長期的に新たな業務もこなせる人材として活躍してもらうためです。例えば、エンジニア出身者が「コンサル業もやりたい」という思いだけで先走ってチャレンジばかり追うと、できないことの多さに心折れてしまいます。仕事のうち7割は過去の経験を生かしてできることにし、残り3割のパワーを新しいチャレンジに注ぐといったバランスが大切だと思います。

稲垣:当社も、会社と仕事に慣れる期間として、新人研修期間を3カ月置いています。業界の未経験・若手採用から即戦力採用まで行っていますが、若手には3カ月の間に必ず成功体験を積んでもらい、即戦力人材にはどんなことでもいいからインパクトのある成果を出せる環境をつくります。両者に共通するのは、社内の信頼を得るために、いかに分かりやすい成果や成功体験を積んでもらうかですね。

安田:素晴らしい制度ですね。

稲垣:経営陣と最終的に採用を決めると、配属予定先の部門長が採用責任者になります。3カ月間で責任を持って育てることがミッションとなり、インパクトのある成果を残せるようにサポートする。彼らの力を最大限に引き出すことをマネジメントクラスに明確に課すことで、社員全体のレベルアップにつなげるのです。

三井:いい方法ですね。当社でも「採用申請者」が採用責任を負う制度をつくっています。転職者に期待する役割は何か、すべてデータ化しているので、期待に沿った活躍をしているか否か、誰もが判断できるようにしています。

小林:既存のポジションの採用は部門長がするとして、新しいポジションに配置する際はどうしていますか。

稲垣:取締役か社長が採用責任者になります。ただ、社長だけだと(育成に手が回らず)どうしても放置されますので、もう一人、別の経営メンバーや部門長などを採用責任者として配置しています。人事としても、メンタルケアにはとくに気を使いますね。

小林:そうですよね。人材育成にコミットするパワーは、なかなかかけられないでしょうから。「自由にやって」と言われて放っておかれて、もはや何が自由なのか分からない状態になるとかね。

安田:そうそう。まさに私がそうでした(笑)。

稲垣:経営陣とは、定期的に「採用委員会」を開いて、半年後、1年後のビジョンを常に共有しています。即戦力採用では、人材をプールしているので、採用に至るまでに時間がかかります。「今日採って、明日入社する」というケースはほとんどないので、1年後に当社がどうなっているのか、事業の方向性と組織のあるべき姿なんかも話し合ったりしていますね。現場のニーズもありますが、そのバランスを上手に取りながら議論しています。

即戦力人材と会社のWin-Winな関係を追い求めることが、人事・採用担当者の本質的な仕事

三井:採用から配置までトータルに考えるという点では、私は今「純増100%」という目標を設定されています。採用人数ではなく、入社と退職を合わせて「純増100%」。つまり、すぐ辞めてしまう人を採用しても意味がないんです。

稲垣:なんてセンスのある目標設定!

三井:私も、人材の質と量を担保する上でとてもいいアイデアだと思います。まあ、社長から直々に指令が来てやらざるを得ない状況……というのが本音なのですが(笑)。

小林:マネジメント力のある社長ですね。離職させないって、いちばん大事。

三井:「離職させないことまでを含めて採用である」という考えには賛同しますし、「とにかく入社させればいい」という目標で動いている採用担当には、目線を変える上でも取り入れたらいいかもしれません。

稲垣:入り口から定着までを見るのは、とても本質的な目標設定だと思います。人の優秀さは、ポジションによって大きく変わります。営業で優秀だったけれど、企画になると途端にパフォーマンスが落ちることもありますし、会社の組織バランスや経営方針によっても、優秀な人の定義はどんどん変わっていきます。でも、離職に関しては、「辞めさせないことが是」と常に言いきれない。組織で活躍してもらうための施策もたくさんありますしね。何が会社にとっていいのか、柔軟に問い続ける姿勢が、人事・採用担当者には必要ですね。

 

【後編】ポイント
・採用プロセスの設計を経営陣と議論する
・入社者に対して、人事のフォロー体制をしっかりつくる
・入社者に対して、業務内容や評価軸をはっきりさせる
・入社者が会社と仕事に慣れる研修期間を設ける
・会社にとって何がいいことなのか、柔軟に問い続ける姿勢が人事・採用担当者には必要

まとめ
前編・後編合わせて、2時間に及んだホンネの議論。人材をプールするという採用手法から、採用後のフォロー体制、人事・採用担当者の目標設定方法など、即戦力採用とその人材の定着について語っていただきました。参考になるヒントをつかんでいただければ幸いです。

 

取材・編集:田中瑠子、編集:冨田有香

編集部より:この記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」の人気連載「ホンネで語る! 人事座談会【後編】即戦力人材の最適配置の秘訣」を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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