経年劣化の観点で不動産投資なら「築古ワンルーム」

三井住友トラスト基礎研究所の東京23区の賃貸マンションに関する調査データによれば、マンションの経年劣化による価格下落は、築年数とタイプによって大きく異なるという興味深い結果になっています。

この分析では、東京23区の賃貸マンションを不動産調査会社の成約事例データを使って、タイプ(シングル、コンパクト)、成約時期(11区分)、築年数(26区分)で分類し、572本のモデルを構築して分析しています。

図はその分析結果をグラフ化したものですが、3つのフェーズに分けています。

最初は、築3年~築10年のフェーズで一番大きな下げ圧力がかかっている。その理由は新築物件との競合です。

次は、築11年~20年のフェーズで、賃料への下げ圧力が低下しているのがわかります。

第3段階の、築21年以降のフェーズでは、第二段階よりもさらに賃料に対する下げ圧力が低下していることがわかります。特に、ワンルームタイムに相当するシングル(18㎡以上30㎡未満)においては、経年による下げ圧力がほとんどないことがわかります。

この分析結果には、新築物件の供給状況や駅からの距離といった要因は考慮されていませんから、飽くまで一般論として捉える必要があります。しかし、次のような仮説が立てられるのではないかと思います。

1.投資するならファミリータイプよりもワンルーム
ワンルームはファミリータイプに比べ、テナントの入れ替わりが激しく、高コストという人もいます。しかし、23区内であれば物件需要が強く、空室リスクが低くなります。そして、この分析データのように価格の下落についても優位性が存在するのであれば、やはり投資用としてはワンルームを選択すべきということになります。

2.築21年を超える古い物件も、物件選択次第で収益機会が存在する
新築物件が割高であることは、このブログを読んでいる人であれば既に知っていると思いますが、中古の築古物件にも経年劣化が低いという点から、投資妙味があるというのは意外な結果です。

築年数が古い物件は耐震構造や室内の設備の問題から、避けた方が良いというのが定説ですが、物件の劣化という観点からは狙い目かもしれません。ただし、大規模修繕の費用が発生したり、エアコンのような室内備品の交換のリスクは高くなりますから、物件の目利きが必要になります。初心者向けというより、中上級者向けの投資対象と言えるでしょう。

劣化のスピードは物件や築年数で異なりますが、平均すれば年に1%程度。ワンルームマンションの利回りが4.5%でイールドギャップ(借入金利との差)が3%程度です。不動産投資とは、物件を保有するリスクの見返りに、この経年劣化とインカムの差を狙っていく投資を考えることができます。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。