米4月ミシガン大信頼感、楽観度が後退

安田 佐和子

米4月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は89.7と、市場予想の92.0を下回った。前月の91.0にも届かず、2015年9月以来の低水準を示す。内訳をみると、見通し指数が79.6と前月の81.5を下回り、ヘッドラインと同じく7ヵ月ぶりの弱さに。現況指数も105.4と前月の105.6以下に終わり、2015年11月以来の水準へ低下した。ダウが過去最高値までわずか2%まで接近するほど米株は切り返したものの、ガソリン価格の上昇が引き続きセンチメントの低下につながった可能性を示唆している。エネルギー情報局によるとガソリン価格は3月の一時1.841ドルから、4月に入って一時2.083ドルと昨年末以来の水準まで回復した。さらに家計をはじめ失業率、ビジネスなど全般的に見通しが弱含んでおり、楽観度の後退を示す

原油先物が40ドル台を回復する流れを受け、インフレ見通しは1年先につき前月と変わらず2.7%。5−10年先は逆に前月の2.7%から2.5%へ低下し、今年の2月や2015年10月と並び少なくとも20年以来の低水準を示した。

ミシガン大学のエコノミスト、リチャード・カーティン氏は、今回の結果を受け「4ヵ月連続で低下したとはいえ、2015年12月を2.9ポイント下回る程度で景気後退のサインが点灯しているわけではない」との認識を寄せる。ただし、消費者の間で家計見通しを始めインフレ調整済み所得、就労者の伸び鈍化、世界経済の減速などに対し懸念が高まっていると指摘。こうした背景を捉え「個人消費につき2.5%増」を予想、従来の2.7%増加から下方修正した。

ミシガン大消費者信頼感、4ヵ月連続で下振れ。


(作成:My Big Apple NY)

・1年先の家計見通し指数 118、直近で最低<前月は127
向上する 31、直近で最低<前月は36
変わらず 54、4ヵ月ぶり高水準>前月は50
悪化する 13、直近で最高>前月は9

・所得と物価の伸び率に対する1−2年先の家計指数 74、直近で最低<前月は82
所得の伸びが物価を上回る 22、2015年11月以来の低水準=前月は22
所得の伸び率と物価が同じ 30、直近で最低<前月は36
所得の伸びが物価を下回る 48、直近で最高>前月は40

・所得が1年先に拡大するとの回答
今回 47.8%、3ヵ月ぶり低水準<前月は48.6%

・1年先のビジネス見通し指数 101、6ヵ月ぶり低水準<前月は104
向上する 21、直近で最低<前月は23
変わらず 55、4ヵ月ぶり高水準>前月は54
悪化する 20>前月は19

・1年先の失業率見通し指数 87、直近で最低<前月は94
低下する 17、直近で最低<前月は20
変わらず 52、3ヵ月ぶり低水準<前月は52
上昇する 30、直近で最高>前月は26

・1年先の金利見通し指数 40、3ヵ月ぶり低水準<前月は44(低下を見込む場合に指数は上昇)
低下する 6、4ヵ月ぶり低水準<前月は7
変わらず 28、3ヵ月ぶり低水準<前月は29
上昇する 66、3ヵ月ぶり高水準>前月は64

・1年先のガソリン価格指数 26.6<前月は27.3(値上がりを見込む場合に指数は上昇)
下落する 3、直近で最低<前月は4
変わらず 33、直近で最低<前月は37
上昇する 64、直近で最高>前月は58

・自動車購入指数 146>前月は145
買い時 71、2月の水準へ戻す>前月は69、直近で最低
分からない 4、直近で最低<前月は7
買い時ではない 25、4ヵ月ぶり高水準>24

・住宅購入指数 153、直近で最低<前月は154
買い時 76、直近で最低=前月は76
分からない 1、2月の水準へ戻す<前月は2
買い時ではない 23、直近で最高>前月は22

・主要機器 156>前月は155、直近で最低
買い時 74>前月は73、直近で最低
分からない 8<前月は9
買い時ではない 18、3ヵ月連続=前月は18

――米4月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は、以下の興味深い点が浮き彫りとなりました。

1)1年先の家計見通し指数、所得と物価の伸び率に対する1−2年先の家計指数がそれぞれ直近で最低
2)1年先ビジネス見通しも、6ヵ月ぶり低水準
3)1年先失業率見通し指数も最低、失業率の悪化を見込む声が拡大
4)1年先の金利見通し指数では、上昇を予想する見方が増加
5)購入見通し指数は自動車と主要機器で上向きも、住宅では「買い時ではない」との回答が直近で最高

米4月ミシガン大消費者信頼感・速報値は、明らかにセンチメントの失速を確認しました。米3月小売売上高が予想以下だったはずで、ミシガン大学のカーティン氏も個人消費見通しの予想を下方修正しています。米4月NY連銀製造業景況指数は一段の改善を遂げ、製造業の回復に期待が募る半面、肝心の消費が鈍化する可能性が高まりつつあります。

(カバー写真:Atomische * Tom Giebel/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年4月18日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。