熊本地震と慶長地震とのアナロジー

加藤 完司

テレビ朝日のモーニングショーで興味深い話をしていた。カラヴァッジョの「法悦のマグダラのマリア」が描かれたころ、とは言っていなかったが、その頃、すなわち秀吉や家康や真田がごたごたととしていた頃、慶長大地震が起きて、四国東海にかけて大津波が襲ったという。初めは大分から近畿にかけて大きな地震が連続して起き、その9後に慶長地震となって大きな被害がもたらされた。嘘とは思わないが、確認のため手元の理科年表で見るとこうあった。

159694日(慶長一年閏七月十二日):豊後:73日より前震があり、11日に多発してこの日、大地震(推定 M7.0)。高崎山など崩れる。海水が引いた後大津波が来襲し、別府湾沿岸で被害、大分などで家屋がほとんど流出・・・。

1596年9月5日:畿内:京都では三条より伏見の間で被害が最も多く、伏見城天守大破、石垣崩れて圧死約500.諸寺、民家の倒潰も多く、死者多数(推定 M7.5)。(中略)余震が翌年4月まで続いた。

1605年23日(慶長九年十二月十六日):東海、南海、西海諸道:地震の被害としては淡路島での記述があるのみ。津波が犬吠埼から九州までの太平洋岸に来襲して、八丈島、浜名湖近辺、紀伊西岸、阿波、土佐、崎浜、室戸での被害記録が残っている。

これらの記述、まるで熊本地震と東日本大震災を合わせたような既視感がある。地震予知は地質学に伴う不確実性のため最新技術を適用したところで科学的な予知は不可能。そこで代役を務めるのがアナロジー。これはこれで立派な科学。すなわち、今回の熊本地震は慶長地震に似ている要素があるというのは正しい

もう一つ気になるのが地震エネルギーの蓄積。同番組で専門家が、GPSによる近くの大きな移動が観測されている所は安全で、動きが観測されていないところの方が危険、と述べていた。なるほどニュートンさんが発見したF=mαだ。地殻が動けば力は移動に費やされるので0。動いていないということは、力が地殻の歪みとして地殻に蓄えられているわけだ。

そこで気になるのが過去400年間の日本付近で起きた大きな地震の分布図。理科年表にあるのだが、公益社団法人「日本地震学会」HPで同じ図が公開されていた。不気味なことに、険峻な四国山脈を形成したプレートが滑りこんでいる四国沖では、地震が観測されていない。南海地震に備えている背景はここにある。アナロジーは、同様の条件にあれば起きていないことはいずれ起きる、という単純なもの。しかし真理である。