差別化戦略に必要なのは「何を捨てるか」

「SHINOBY`S BAR 銀座」の初代店長は蒲池さんという方でした。真面目で誠実な仕事ぶりが印象的でしたが、彼が独立してお店を出したというので、出かけてきました。南新宿駅からすぐですが、代々木駅からも歩いていける便利な場所です。

外から見た外観は、新規開店とは思えない雰囲気。店内も簡素な造りで、お世辞にもオシャレとは言えない内装。恐らく居抜き物件(前のテナントの内装をそのまま使う物件)で最低限の内装費でやりくりしたと思われます。

しかし、その分コストパフォーマンスは圧倒的です。ドリンクは380円からで、ワインも500円以下。さらに、名物の神戸牛ホルモン鉄板焼は1人前1180円です。これに、霜降り和牛980円(写真)をトッピングして、注文してみましたが、写真の通り圧倒的なボリュームと肉のクオリティで、大満足でした。霜降り和牛はA5ランクですから、破格の値段です。

この価格設定なら、2人でワインを飲んで、鍋を食べて、〆まで注文しても、4000円程度。一人2000円で良質な鍋がお腹一杯食べられるのは、価値があります。

「価値>価格」に気が付いた人が駆けつけているようで、開店からまだ間もない月曜日の遅い時間だというのに、お店は繁盛していました。月曜日の遅い時間ですが、グループでやってきている人たちが圧倒的。一人で食べていたのは、私だけでした。

内装コストを削って、原価率を上げて、価格競争力を高め、お客さんに満足度を高めてもらうことでリピートしてもらう。鍋なので、調理のコストも下げられ、少人数でのオペレーションが可能になります。「低コスト・高回転率」で差別化する戦略です。

店舗経営で大切なのは強みを絞り込んで差別化すること。あれこれ欲張ってビジネスをすると、自分たちの強みがボケてしまって、中途半端になってしまいます。だから、差別化するためには「何を捨てるか」がポイントになります。

このお店も、もし内装にある程度お金をかけて、従業員を雇ってサービスを良くして、フランスのワインも品ぞろえに入れて・・・とユルくやっていたら、きっと個性の際立たないエッジの効かない店舗になって、お客様が押し掛けることもなかったでしょう。

差別化できない時は、自分が持っているものの中から不要なものを思い切って手放してみる。それによって、自分の個性が際立ち、他の人には提供できない新しい価値が生まれてくることを、教えてもらいました。

今月開店した「コンロ家」というお店。デートではなく、グループで予算を気にしないで思いきりお肉が食べたい時に行ってみてください。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年4月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。