文明論から読み解く21世紀!!

米ソ冷戦終結後、リベラル・デモクラシーが世界を席巻するとの議論が展開された。フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』がその典型的な議論である。フクヤマの議論は、ヘーゲルの『精神現象学』に関して、独特の解釈を施したコジェーヴの議論を基盤として展開された歴史論だった。彼はマルクスとは異なって、最も合理的で、矛盾のない政治体制は、共産主義ではなく、リベラル・デモクラシーであると論じた。政治体制の最終形態こそがリベラル・デモクラシーだと主張したのだ。

しかし、全ての社会がリベラル・デモクラシーに向かうという楽観的な議論に対して、強烈な異論を提出したのが、サミュエル・ハンチントンだった。ハンチントンは『文明の衝突』において、世界を幾つかの文明に分割し、それらの文明が衝突しあうと予言した。この議論は、911テロの以前に提出された議論であったため、911テロの後、ハンチントンの予言が不気味な真実を帯びて論じられるようになった。今日でも所謂「イスラム国」の台頭を眺めてみると、ハンチントンの議論は真実味をもって論じられることが多い。

だが、ハンチントンの議論に対して、独自の立場から、異論を提出したのがエマニュエル・トッドだ。彼は人口学の立場から、文明は衝突に向かうのではなく、文明は接近すると論じた。イスラムの原理主義は、近代化に向かうための過渡期に他ならないというのだ。

果てして、21世紀、世界はどのような方向に向かって動くのか、議論を整理し、それぞれの議論をもとに議論を深めた。

リベラル・デモクラシーは世界を席巻していくのか?

諸文明は衝突しあうのか?

文明は接近するのか?

フクヤマ、ハンチントン、トッドの議論、そしてイスラムの台頭について、文明論という大きな視点から21世紀を論じた。


228日、東京会場で開催された「文明論から読み解く21世紀」、いよいよDVDが発売されることになりました。お申し込みはこちらから、よろしくお願いいたします。 

講義内容

  • イデオロギー批判者としてのマルクス
  • ヘーゲルの「哲学」理解
  • フランシス・フクヤマ「歴史の終わり」・史的唯物論に基づく歴史発展段階説
  • 「精神現象学」をコジェーブ流に読み解く。リベラルデモクラシー<ナポレオンのイエナの会戦>
  • 自由民主主義体制とは
  •  イスラム教についての言及
  • サミュエル・ハンチントン「文明の衝突」
  • エマニュエル・トッド「文明の接近」「識字率と出産率」移行的危機とイスラム原理主義
  • 近代的自由の条件「消極的自由」と「積極的自由」
  • 真理(理性)への服従 

編集部より:この記事は政治学者・岩田温氏のブログ「岩田温の備忘録」2016年4月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は岩田温の備忘録をご覧ください。