【映画評】最高の花婿

フランス・ロワーヌ地方に暮らす敬虔なカトリック教徒のクロードとロビーのヴェルヌイユ夫妻には4人の娘がいた。3人の娘は、それぞれユダヤ人、アラブ人、中国人と結婚し、教会で挙式もできなかったと、夫妻は内心がっかりしていた。末娘ロールだけはカトリックのフランス人と結婚してほしいと願っていたが、ロールが連れてきたのは、カトリック教徒だが、コートジボワール出身の黒人青年だったから、家族は結婚に猛反対!さらにクロードの軽はずみな発言によって、娘たちの夫は怒ってしまう

フランス人一家がアラブ、ユダヤ、中国、アフリカ系の男性と結婚したことから巻き起こる騒動を描くコメディー「最高の花婿」。かつて、白人の娘が黒人青年と結婚することから騒ぎが起こる様を描いたのは、米映画「招かれざる客」だったが、さすがは移民と異文化混在の国フランス、なんと非フランス人との結婚は4組にいたるから、それはもう大変な騒ぎだ。何しろ、人種、宗教、文化、習慣のすべてが違う。食事のルールも違えば、政治の話題も微妙すぎてご法度。全員が集まれば、何を話してもカドがたつというものだ。笑いごとではないのだが、これが実に可笑しい。コメディーならではのエキセントリックな会話が飛び交い、あえて腫れ物に思い切り触れるのは、シリアスな社会問題だからこそ、ユーモアのセンスが必要ということなのだろう。

ここに日本人の婿がいたら、はたして?!とつい考えてしまうのは私だけではないはずだ。ドタバタ騒動の果ては、予想通りのハッピーエンドがやってくるので、ホッとさせられる。異文化交流は決して簡単なことではないが、わかりあおうとする気持ちが最初の一歩だ。テロや難民受け入れ問題などで揺れる中、この映画が本国フランスで大ヒットするというところに、移民国家の懐の深さがある。

【60点】
(原題「QU’EST-CE QU’ON A FAIT AU BON DIEU?」)
(フランス/フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督/クリスチャン・クラヴィエ、シャンタル・ロビー、アリ・アビタン、他)
(異文化交流度:★★★★☆)

この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年4月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。