どうも新田です。本日は憲法記念日ということで、関連の論考もアゴラはもちろん、あちこちのメディアで出ているわけですが、私の方は世論調査から考える憲法改正論議をテーマにしましょうか。きのうのNHKの世論調査報道を見ていて、改めて改憲に対するネガティブ、もしくは消極的な空気が支配しつつあるのかな、と感じた次第です。
保守系の論客の知り合いとかは、「NHKの誘導尋問だ」的な指摘をしていて、まあ、理論上は、設問設計上の問題が全くないとは言えませんが、選挙関係の仕事もしてきた身からすると、マスコミの世論調査におけるNHKの質量ともに群を抜いていることは痛感します(今回も震災のあった熊本以外の全国で1523人からRDD方式で聞き取り)。本当に“誘導尋問”があったかどうか、経年単位で観察してみないとわかりません。
5回の調査で初の傾向にみる変化
きのうの調査データはまだNHK放送文化研究所のサイトにアップされていなかったので、2015年夏時点の資料から引用しますと(ここからダウンロードしてね)、憲法改正の是非を訪ねた質問に関して、このように推移しております。
なお、最新の2016年では「改正する必要はないと思う」が31%とのことで、過去最多で、初めて「あると思う」を上回ったようです。つい3年前の調査では、2000年代前半から強まっていった改憲論の傾向を反映し、「改正する必要はある」が「ない」をかなり上回っていたので、この急変ぶりに目を見張ります。もちろん、どこぞの煽りブロガーが得意とする「パネル調査」のように調査対象が同じというわけではないので、定性的にサンプルの質の問題がないとまでは言い切れませんが、しかし、2007年から1000人を超えるサンプルに同じ質問をしてきていますし、改憲論が優勢だったことだけでもNHKがリベラル方向に“誘導尋問”しているのかのようにdisるのはビミョーです。やはり2014年から「必要がある」が急減したのは、集団的自衛権の論議が勃興してきた時期と重なります。
そして、昨年の安保法制成立を経て、今年は「必要はない」が初めて上回っていて、安倍政権は支持している人が多数派であっても、それなりに国際紛争の現実味が増したことに対する警戒心もあるという複雑な心境が読み取れるんじゃないでしょうか。
大阪都構想のように世代別で賛否は分かれているの?
一方で、この数年、選挙関連の調査業務をしたり、先日のニコ生のような社会保障問題の議論に参加したりと、いうこともあって世代別の傾向変化というものに、新聞記者やっていた頃よりも関心が強くなっております。特に、昨年の今頃は、大阪都構想の住民投票を巡って、維新と反維新がバトっていたわけですが、結果はみなさんご存知の通り、NHKの世論調査で世代別で賛否にそれなりの差が出たわけです(住民投票とシルバー民主主義を巡る「異論」は中嶋よしふみさんとかからございますけども、今回は立ち入りません)。
あの住民投票は、憲法改正の国民投票のテストケースのようにも思っていて、「シルバー民主主義」が指摘されるご時世にあって、既存のシステムを変えるかどうか国政上のアジェンダになった時、世代別にどのような投票行動をするか極めて興味深いものがありました。
今年のNHK調査は、まだデータがウェブに出ていないんですが、先述した改憲の是非と同じように、世代別の賛否傾向についても2007年、および13、14、15年の過去4回の調査は公表されております。特に14年以降の傾向はおそらく今年も反映されていると推定できるわけですが、それがこちら。
しかし、こうした数字が出ているからといって、憲法改正が悲願の安倍さんや、自民党の支持率が目立って下がっているわけではないことに留意しなければなりません。だって、直近の数字はこれだもの。
野党は表面的な数字だけをみて「戦争法反対ガー」とか「立憲主義ガー」とか、脊髄反射的に言っているだけでいいのか、様々な数字を付き合わせて複合的に分析しなければ、参院選に向けて、最大多数派の「支持なし層」に刺さるメッセージは設計できないと思うわけですよ。脊髄反射をお家芸にしている社民党や共産党はアレとしても、特に与党経験のある民進党の先生たちには熟考いただければとは思うんですけどね。
それにしても、アゴラでも参院選に向けて独自に選挙情勢とかの世論調査報道やりたくなってきましたね。しかし、やはりネックは資金(泣)。それこそクラウドファンディングやって、分析結果の秘中の秘だけは有料コンテンツとして投資いただいた人のみに共有するとかもありかな、と思いつつ、篤志家の方にご支援・ご相談いただけると幸甚でございます(手揉み)。こちらからは以上です。
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新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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