【映画評】テラフォーマーズ

TERRAFORMARS SOUNDTRACK
21世紀、人口爆発を迎えた人類は、コケと“ある生物”を送ることで火星を地球化させる火星移住計画を実行する。それから500年後、計画の仕上げとして、その生物を駆除するために15人の隊員が火星に送り込まれることに。ワケありのメンバーばかりが集まり、皆、高額な報酬目当てに参加する中、小町小吉だけは勝手に志願した幼馴染の奈々緒に付き合い、火星行きを決意していた。しかし火星に着くと“ある生物”は人型に異常進化した驚くべき姿になっており、凶暴性むきだしで隊員たちを襲い始める。絶体絶命な状況だったが、メンバーの身体には、彼らも知らされていない、ある秘策が仕込まれていた…。

大人気コミック(原作:貴家悠、作画:橘賢一)を映画化した異色のSFアクション「テラフォーマーズ」。どんなジャンルも節操なく(?)手掛ける三池崇史監督は、ついに特撮ヒーローものを作ってしまった…というのが正直な感想だ。異形の生物は、わざわざ“ある生物”とないしょにしなくても、CMや予告編ですでにわかるはず。現実世界でも嫌われ者のその昆虫は、びっくりするほどの進化をとげているのだが、その進化と目的など、全貌は本作だけではまだ未知数だ。主人公たちが昆虫の能力を身に着けているのはスパイダーマン的だが、変身してしまうところや、チーム(というには、皆いろいろ秘密があるが)で戦うあたりは、むしろ仮面ライダー的といえる。原作とは異なるキャラ設定もあるが、それは映画化するにあたってはやむをえないだろう。登場人物全員が笑えるほどの怪演の中、武井咲ちゃんだけはどこまでもビューティフルなんて、ちょっとズルい。原作に思い入れはないが、それでも、映画としてどこかちぐはぐな印象はぬぐえない。続編を見据えたラストで締めくくるが、大丈夫なのか、この映画? コメディ路線に変更してくれたら、嬉しいが、さすがに無理か。ともあれ、このモヤモヤを何とか収束してもらうためにも完結編は必見となった。
【55点】
(原題「テラフォーマーズ」)
(日本/三池崇史監督/伊藤英明、武井咲、山下智久、他)
(変身度:★★★★☆)

この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年5月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。