米3月貿易赤字は縮小も、輸出の減少トレンド継続

米3月貿易収支は404.43億ドルの赤字となり、市場予想の412億ドルから縮小した。6ヵ月ぶりの高水準だった前月の469.63億ドル(471億ドルから修正)を13.9%下回る。前月比での赤字拡大を、3ヵ月連続で止めた。輸出と輸入がそろって減少したものの、輸入の減少率が上回り赤字縮小につながった。

内訳をみると、輸出が前月比0.9%減の1766.18億ドルとなり、2011年6月以来の水準へ縮小した1月の水準に接近している。輸入は3.6%減の2170.61億ドルと減少に転じ、過去5ヵ月間で4回目の減少を示す。国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、574.30億ドル。前月の632.10億ドルを下回り、2015年7月以来で最低にとどまった。なお2015年の貿易赤字は前年比4.6%増の5315億ドルと、2012年以来で最大を記録した。2014年の5050億ドルに続き、2009年以来の水準まで改善した2013年の4715億ドルから増加した。

大和キャピタル・マーケッツのマイケル・モラン米主席エコノミストは、結果を受けて「モノの赤字が前月の645億ドルから585億ドルへ大幅に減少し、赤字削減につながった」と指摘した。サービス収支の黒字も2月を上回る181億ドルとなり「米1-3月期国内総生産(GDP)での純輸出におけるマイナス寄与度は過去4四半期の0.53%ポイントから0.34%ポイントへ縮小する」という。ただし経済の強まりを示すものではなく、「輸出と輸入の減少トレンドを確認した」と結んだ。

貿易収支、輸出も輸入も世界景気減速の影響か減速。

(作成:My Big Apple NY)

輸出の内訳をみると、モノは前月比1.6%減と過去5ヵ月間で4回目の増加を示した。資本財とサービスを除き、軒並み減少している。

(増加項目)
・資本財 2.4%増、前月の0.6%減から転じ4ヵ月ぶりに増加
・サービス 0.5%増、前月の±0%から転じ増加トレンドへ回帰

(減少項目)
・消費財 9.3%減、前月の6.7%増から反転
・自動車 5.6%減、前月の2.8%増から減少に反転
・食品/飲料 3.7%減、前月の3.3%増から転じ減少トレンドへ回帰
・産業財 2.5%減、前月の0.5%減を含め6ヵ月連続で減少

輸入の内訳をみると、モノが4.3%減となり前月の1.4%増から転じた。過去5ヵ月間で3回目の減少を示す。原油価格が持ち直すなかで、量ベースでの原油関連輸入は12.9%増と3ヵ月ぶりに増加した。金額ベースでも、9.4%増と3ヵ月ぶりに増加している。石油製品を除いた場合は4.3%減と、前月の2.3%増から減少に反転。消費財から資本財まで、軒並み減少した。

(増加項目)
なし

(減少項目)
・消費財 9.9%減、前月の7.4%増から転じ減少トレンドへ回帰
・資本財 5.9%減、前月の4.5%増から反転し減少トレンドへ回帰
・食品/飲料 4.6%減、前月の1.3%増を含め4ヵ月連続で増加
・自動車 2.6%減、前月の5.0%減に続き2ヵ月連続で減少
・産業財 2.9%減、前月の2.9%減に続き3ヵ月連続で減少

国別でのモノの貿易収支動向をみると、中国への赤字は前月比25.7%減の209.00億ドルと2ヵ月連続で減少した。中国が2015年8月に3日連続で人民元を切り下げた後に対中赤字は減少トレンドをたどり、1月6日にも人民元切り下げを受けても流れは変わっていない。逆に日本への赤字は25.7%増の67.12億ドルと、増加に反転。欧州への赤字額も27.3%増の138.41億ドルで、増加に転じた。主な原油輸出国への貿易収支は赤字拡大が優勢。メキシコへの赤字額は8.8%増の54.05億ドルへ拡大した。石油輸出国機構(OPEC)との貿易収支は7.9億ドルと2ヵ月連続で黒字ながら、前月の17.7億ドルの黒字から縮小。一方で、カナダへの貿易赤字は87.4%減の1.21億ドルとなった。以下は、今回の貿易収支における輸と輸入の内訳のほか各国ごとのモノの貿易収支動向。

(作成:My Big Apple NY)

アトランタ連銀は、米3月製造業受注や米2月貿易収支を受けて、4-6月期のGDP予想を従来の1.8%増から1.7%増へ引き下げた。エコノミスト予想平均の2.3%付近を下回る水準を示す。

――米1-3月期GDP改定値こそ上方修正される見通しながら、米4-6月期は引き続き強含みのサインを点灯させていません。米4月新車販売台数が改善したとはいえ力不足は否めず。新芽がすくすく伸びる季節を迎えながら、成長率はすっきり上向く気配は感じられません。

(カバー写真:Alexander Rabb/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年5月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。