オリンピック借用地は神宮球場ではなく都跡地では

尾藤 克之

サンケイ新聞によれば「プロ野球の実行委員会が9日、東京都内で開かれ、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会がヤクルトの本拠地である神宮球場の約7カ月間の借用を求めている問題について12球団で協議し、球界の総意として借用期間の短縮を要望することで一致した」とされている。

総意というのは、「出席した全員の一致した意見、考えであること」を明示している。当該出席者は事前に球団内で意思確認をしているだろうから、これはプロ野球12球団全体としての決定事項であることを意味している。

「非常に長い間、神宮球場が使用できないかもしれない。ヤクルトを11球団で支えていく。大がかりなオペレーション(動き)になるという意識を持っていかないと」(サンケイ新聞)ともあり、対包囲網はできつつある。

さらに、神宮球場の問題はプロ野球に限った話ではない。東京六大学野球、東都大学野球、全日本大学野球など、大学野球の開催にも影響を及ぼす。また、神宮球場では年間を通じて、プロやアマチュアを問わず、約500を超える試合やイベントが開催されている。プロ野球12球団の総意があり、大学野球やイベントにも大きな影響がある以上、強引に決定することは難しいだろう。

こうなると、代替施設が必要になる。今年の3月16日、東京都が新宿区の市ヶ谷商業跡地を韓国人学校の用地として、有償で貸与することを検討をはじめたことを各メディアが報道した。神宮球場のグラウンド面積は、12,659m²である。一方、市ヶ谷商業跡地面積は、6,100m²である。神宮球場の半分の面積は確保可能だ。

平成22年11月の、東京都特別支援教育推進計画第三次実施計画によれば「当該地に、知的障害をもつ高校生を対象とした「市ヶ谷地区特別支援学校(仮称)」を平成31年度に開校すると位置づける」とされている。しかし、平成27年5月 東京都教育委員定例会で「特別支援学校」を当該地から別の場所に設置すると計画変更の報告がされている。跡地の活用方法をめぐり紛糾していることは周知の事実である。

オリンピック借用地問題は喫緊の課題でもある。議論が深まらないのであれば、市ヶ谷商業跡地を神宮球場の代替地として検討することはできないのだろうか。東京五輪・パラリンピックが目的ならば充分な大義があると思われる。また、築地市場跡地も候補のひとつになるだろう。現状では、東京五輪・パラリンピックのバスターミナルとして使用することしか決まっていない。面積は神宮球場の約5個分である。いま多くの叡智を結集することが求められている。

●尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト/経営コンサルタント。議員秘書、コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ)『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。
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