メディアのアンケートが恣意的な件

尾藤 克之
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「スポーツニッポン新聞社は12日、公式サイト『スポニチアネックス』でベッキーの復帰について緊急アンケートを実施。計3問にいずれも2000人以上の回答が寄せられた。」(原文ママ)とのことです。

スポーツニッポン以外の各社も同様のアンケート調査を実施していますが否定的な回答が多かったように思います。しかし、アンケートは設計次第で恣意的な誘導が可能になるため注意が必要です。

●恣意的な誘導とはなにか

次のようなアンケート項目があったとします。

Q.若年層による凶悪事件が増加傾向にあります。少年法の年齢引き下げに賛成ですか?

Q.若者の薬物汚染が拡大しています。罰則の引き上げに賛成ですか?

Q.移民の受け入れによって失業率が上がっています。移民の受け入れに賛成ですか?

これらは明らかな誘導であることからアンケートとして適切ではありません。しかし同様のアンケートは各所でかなり散見されます。ベッキーの調査はこれに近いと思われます。「復帰をすることが早い」ことを示唆したうえでアンケートを実施しているからです。本来は偏りがないように標本を取り出す工夫をしたうえで精度を高める必要性があります。そうすることによって信頼性が担保できます。

今回の緊急アンケートは2000名のサンプルを短時間で集めているのでランダムサンプリングではないと推測します。投票形式なので標本抽出ではなく単なる意見投票であるため投票結果としての信頼性は高くはありません。

●精度を高めるには

RDDという世論調査で最も多く使用される手法があります。一般固定電話に機械がランダムに電話して結果を集計するものです。しかし独身者の固定電話契約率が3割弱という現実や、携帯電話番号(050、070、080、090)が除外されること、日中の荷電であることを考えると、この調査にも限界があります。

メディアの調査にはなんらか恣意的な作用が働いているものです。例えば、直近(2016年)のTPPに関する世論調査であれば、朝日新聞(肯定34%、否定46%、不明20%)に対して、産経新聞(肯定61.0%、否定28.9%、不明10.1%)とかなりの差が生じています。

それでは街頭インタビューはどうでしょうか。JR新橋駅SL広場でおこなわれているものが定番ですが、お酒のはいったサラリーマンを対象に意見を求めてもきっちりとした回答が得られるとは思えません。

調査の質を高めるには、RDDに携帯電話番号を対象に含み、性別、年代別、地域別、職業別の構成比を補正することです。補正をかけずに集計をするとバイアスが掛かったままでノイズの除去が困難になるからです。

●尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト/経営コンサルタント。議員秘書、コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ)『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。
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