パナマ文書の内容が出てきました。予想通りG7のトピックスにもなるようです。これは重要なテーマだと思うので国際協調を進め、世界の税体系を見直すよいきっかけになればと思います。
パナマ文書から出た企業や株主の住所で突出しているのが中国の28000件、及び香港の21000件であり、日本の800件は実に可愛いものであるということになります。
なぜ、税金を逃れたいのか、この心理は基本的には万国共通です。ただ、多くの一般大衆にはその逃れる手段はほぼ封じられています。が、富裕者や企業レベルでは租税回避地を経由させることでうまく低い税率を適用することができ、事業の展開の仕方では会社全体として税金を低く抑えることができる可能性もあります。
私からするとタックスヘイブンという思想自体が今の時代には合わなくなってきたこと、マネーロンダリングの温床となりやすいこと、それ以上にイギリスの金融街、シティの機能を低下させようとするチカラがアメリカからかかっていること、中国などから性格がよくわからないマネーが世界中を徘徊するその仕組みを封じる必要があり、もはや放置できないと思います。
実はタックスヘイブンが時代遅れの思想だと申し上げるのは今後、仮想通貨を使ったマネロンが中心となると思われ、租税回避地といういかにも怪しそうなやり方が淘汰される時期にあったなかでの出来事だったような気もします。
ではなぜ、アメリカはこの問題をぶち上げたのか、ですが、一つにロンドンのシティ経由の不正マネーを閉ざすことがあったと思われます。シティは自治都市として12世紀ごろからその存在が確認されており、イギリスとは別の一つの国家特権のようなものさえ持ち合わせているとされます。その長い歴史の中で高い秘匿性を武器に不正マネーの温床とも言われてきたわけです。また昨年話題になった世界最大のスポーツファン数を誇るサッカーのFIFAの問題は一つの転機となったと思います。多くのアメリカの主要企業がアイルランドなどを経由して税の最小化を図っており、アメリカ国民が失望したことも影響したでしょう。
単純モデルでは一般的な税は一つの国の中で収まります。その国で儲ける法人と所得のある個人からの税であります。ところがマネーが世界を駆け巡るようになるとそうはいきません。ネット通販は何処から商品が来るのか、その商品は何処の税金を払っているのか、わかりにくくなりました。2カ国以上で仕事をして収入がある場合、どこで所得を申告するのか、そのルールはまちまちです。そして税務は各国さまざまな上、より細分化され、専門家も最新の情報を確認しないと分からないことだらけです。だからこそ、悪知恵も働きます。
会計士にちょっと複雑な事例で「こういう場合の税金は?」と聞いて明白な回答をする人は少ないかもしれません。彼らは一様に「解釈としてはこれこれこうだが、最終的には税務当局がどう判断するか次第で、その内容によってはクレームすることも可能で…」というのは常套のステートメントです。聞いた顧客は「だから、どうすればよいのか?」ということになるのですが、会計士からは「リスクを負えないので断定的なことは言えない」と返されるのです。
中国のマネーも気になります。中国経済の本を読めばいつ崩壊してもおかしくない、という趣旨のことが書きたてられていますが、世界でM&Aを進め、今だ、不動産を買いあさるのも中国人です。上海などの不動産価格は再び急騰しており、比較的高い不動産価格に慣れている日本人が見ても目がくらくらするような金額です。いわゆる常識的に考えられるマネーではなく、中国内のゼロサムゲームのようにみえるのですが、仮にそうだとすれば租税回避地を経由させ、資金洗浄をしていると考えられます。
国際間におけるマネーと税の透明化の対策は必要でしょう。また税法を複雑化させる故に生まれる税の抜け道というのもあります。個人的にはもっとわかりやすく例外規定を減らしていくような仕組みの方がよい気がします。一般大衆はきっちり税を搾り取られ、富裕者は税を最小化する方法を知っている、というのは不公平すぎるでしょう。それこそ99%が蜂起するぐらいの盛り上がりが必要だと思います。
今後の展開に期待しましょう。
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 5月12日付より