面接の質を高めるために人事担当者が取り組むべきこととは? ダメな面接官に共通する特徴を取り上げながら、面接の質を向上させ、採用力を高めるためのノウハウをお伝えする好評連載「ダメ面接官の10の習慣」。第10回のテーマは「ダメ面接官は派手な成果ばかり求める」です。
※本記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」からの転載PR記事です。
候補者の「過去の栄光」などはどうでもいい
中途でも新卒でも採用面接では、候補者の経歴についてさまざまなことを聞きます。しかし、極論を言えば、候補者の「過去の栄光(成果)」などは本当はどうでもいいのです。面接官が興味を持つべきなのは、成果を生んだときに取った思考や行動であり、将来、それらを自社でも再現できるかどうかです。
経験豊富な候補者の面接であれば、自社で任せたい仕事と似たような環境で実績を残しているケースが多いでしょうから、実績を聞いただけでも「自社でもやってくれるだろう」と推測することは容易です。しかし、候補者が若手や未経験者の場合は別。何らかの実績があったとしても、自社で必要としているレベルを満たしていることは少ないですし、その実績を再現できるかどうかもわからないケースがほとんどです。
面接で知りたいただ一つのこと=「習慣」
では面接官は、候補者の「成果を生んだときに取った思考や行動」を通じて何を知ろうとするべきでしょうか。それは、その候補者が持っている「習慣」です。ここでいう「習慣」とは、「無意識でも自動的に生じる思考パターン、行動パターン」のことを指します。
「人間は習慣の束である」という言葉があるように、習慣を知ることで候補者の実力が見えてきます。過去の成果そのものではなく、その成果を出すまでに至った「思考・行動パターン」はどのようなものなのか、それらは本当に「習慣」といえるレベルにまで根付いているのかを知ることで、過去の成果が将来も再現できるかどうかが見えてきます。「習慣」になっていれば、環境が変わったとしても、どんな場面でも成果につながる思考・行動パターンで動けるだろう、と期待できるからです。
選考の場面でよく使われる「性格」「能力」「志向」などは、「習慣」の一部といえます。たとえば、「明るい性格」と「人と仲良くなれる能力」と「人と接する仕事がしたいという志向」は連続的なものとも考えることができ、明確に分類する意味があまりないようにも思えます。だから私は、これらの要素をまとめて「習慣」と呼ぶようにしています。
「習慣」は、長い時間をかけた反復練習で生じる
人の「習慣」がどのように生じるのかを考えれば、候補者に、特定の「習慣」があるかどうかを知る方法がわかります。それは実は簡単なことで、長い時間をかけて反復練習しているかどうかを見ることです。
語学でもスポーツでもビジネススキルでも、何かしらの成果を残すためには、長いあいだ反復練習しなければなりません。ベストセラー作家、マルコム・グラッドウェルが著書『天才! 成功する人々の法則』で紹介して広まった「1万時間の法則」(天才と呼ばれるような人でも、その域に達するためには、1万時間以上の基礎的なトレーニングを積んでいるというもの)を見ても、やはり、「習慣を持っている」=「能力を発揮するのに必要なことが習慣化するほど、長期にわたって何らかの経験を積んでいる」と考えてよいと思います。もちろん、生まれ持った才能というのもあるかもしれませんが、ビジネスで用いられるような複雑な「習慣」が「生まれつき」ということは少ないと思います。
成果を生み出した「習慣」の「由来」を知る
そう考えると、面接では、表面的な成果ばかりにフォーカスするのではなく、成果に至る過程で取った思考や行動が本当に「習慣」と呼べるレベルで根付いているかを知るために、「彼/彼女はなぜ、そういう習慣を身に付けることができたのか?」という、「習慣」の由来を聞き出すべきでしょう。
わかりやすく言うと、候補者の半生から、習慣を生み出すような長期にわたる反復練習の経験があったかどうかを探し出す、ということです。少なくとも半年や1~2年にわたってやってきたことや置かれた環境などが聞ければ、「なるほど、そんな状況に長期間あったのであれば、あのような成果を生み出す思考や行動が習慣化されていてもいいはずだ」と思えます。もし、そうしたものが見つからないのであれば、候補者が面接で話す成果はもしかすると単なるラッキーヒットだったのかもしれず、それを鵜呑みにしてしまったら後悔するかもしれません。
候補者を理解するには、長年の地道な努力を重視して聞く
候補者は面接官にできるだけ大きなインパクトを与えようと派手な成果を言いたがるので、面接での見極めは難しくなっています。面接という短い時間の中で好印象を持ってもらおうと必死になる候補者の気持ちも理解できます。しかし、選考の本質から言うと、先述のように、長年かけた地道な努力や試行錯誤した話のほうが、信憑性が高くてその人を知ることができる価値ある情報なのです。ですから面接官は、候補者に対して、長いあいだ取り組んできたことの中から、自身を表すエピソードを話してもらうように水を向けてください。派手な成果より長年の地道な努力を重視して、候補者のパーソナリティーを理解しましょう。
著者プロフィール: 曽和 利光 氏
リクルート、ライフネット生命、オープンハウスと、業界も成長フェーズも異なる3社の人事を経験。現在は人事業務のコンサルティング、アウトソーシングを請け負う株式会社人材研究所の代表を務める。
編集:高梨茂(HRレビュー編集部)
編集部より:この記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」の人気連載「ダメ面接官の10の習慣」を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。
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