レイムダックになってから輝いたオバマ

「核兵器なき世界」の本当の意味と「日本の役割」:池内恵(新潮社フォーサイト)
http://www.fsight.jp/5104

2009年8月にこんなコラムを書いていた。数日間無料にしてもらいました。

2009年に偶然広島の原爆記念式典に出席したところ、各国と異なり、米国大使が出席していないことに気づいた。オバマ政権なら大使の出席、そして高官の出席をシンボルとして掲げてきておかしくない、と思って色々考え、調べた。しかしオバマが二期を全うし、最後の年に自身の訪問を持ってくるとは予想もしなかった。 米大統領との外交日程を8年単位で考えて、あるとしたら最終年度と考えていたかもしれないが、しかしロシアがいてG8のままだったら日本開催は来年だっただろう。

オバマ政権は初期にまず8月6日の式典への出席を講師から大使に格上げ(2010年)し、政権末期になってケリー国務長官の訪問を観測気球にしてから、大統領の訪問に踏み込んだ。任期の中盤には核兵器廃絶問題は停滞した。イランの核開発疑惑の交渉による妥結が核不拡散を実質的にもたらすかは不明。

メッセージ性やシンボル操作において長けていたオバマ大統領は、任期の初期に(あるいは任期前の当選者としての時期)と、レイムダックとなってから、最も輝いた。再選に失敗し任期を終えてから最も輝いたカーターの後を継ぐとも言えるし、その轍を踏まず理想主義を封印して再選を優先したことで実り多いレイムダック期を獲得したのかもしれない。


編集部より:この記事は、池内恵氏のFacebook投稿 2016年5月28日の記事を転載させていただきました。転載を快諾された池内氏に御礼申し上げます。