米5月ADP全国雇用者数と、米新規失業保険申請件数をおさらいしていきます。
米5月ADP全国雇用者数は前月比17.3万人増となり、市場予想と一致した。2015年4月以来の低水準だった前月の16.6万人増（15.6万人増から上方修正）から改善。ただ、2015年の平均値20.7万人増を下回る水準を保つ。2010年2月以来の増加トレンドは維持した。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。
ADP全国雇用者数、2011年以降の平均値以下が続く。
（作成：My Big Apple NY）
内訳は、以下の通り。
▽企業規模別
中小企業 13.9万人増＞前月は15.0万人増、6ヵ月平均は15.2万人増
大企業 3.4万人増＜前月は3.5万人増、6ヵ月平均は5.4万人増
▽業種別
サービス業 17.5万人増＞前月は17.3万人増、6ヵ月平均は19.6万人増
（米4月ISM製造業景況指数の雇用は53.0と4ヵ月ぶり高水準、米5月マークイット製造業PMI速報値は2014年12月以来の低水準）
・専門／ビジネス・サービス（派遣を含む） 4.3万人増＞前月は3.8万人増、6ヵ月平均は4.8万人増
・貿易／輸送／公益 2.8万人増＞前月は2.4万人増、6ヵ月平均は3.1万人増
・金融 1.3万人増＞前月は0.7万人増、6ヵ月平均は1.3万人増
財生産業 0.1万人減、2ヵ月連続で減少＞前月は0.7万人減、6ヵ月平均は0.9万人増
（米5月ISM非製造業景況指数の雇用は49.2と前月と変わらず、米5月マークイット・サービス業PMI確報値は小幅改善）
・建設 1.3万人増＜前月は1.4万人増、6ヵ月平均は2.1万人増
・製造業 0.3万人減、4ヵ月連続で減少＜前月は0.1万人減、6ヵ月平均は0.2万人減
ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受けて「春にエネルギーと製造業のセクターで雇用が減少したため緩やかな伸びにとどまった」と振り返った。また「小売も採用に慎重」と指摘。ただし、労働市場全般的には雇用増加は堅調で、「失業率の低下には十分」と判断した。
▽米新規失業保険申請件数、レンジ下限を維持もメモリアルデーが影響か
米新規失業保険申請件数は5月28日週に26.7万件と、予想の27.0万件を下回った。前週の26.8万件からも小幅ながら減少し、5月7日週の急増が通信大手ベライゾンのストライキ要因だったことを確認した。ただし、メモリアルデーの3連休前という事情が影響した余地もある。米労働省は特殊要因をｂ指摘しなかったもののワイオミング州とバージニア州は推計としつつ、引き続き30万件割れは65週連続で1973年以来の最長とのコメントを寄せた。4週平均は27万6750件で、前週の27万8500件から減少。1973年以来で最低を示した4月23日週の25万6000件を上回る水準を保つ。
米新規失業保険申請件数、再び年初来のレンジ下限を維持。
（作成：My Big Apple NY）
5月21日週までの継続受給者数は217.2万人と、前週の216.0万人から増加した。被保険者に占める失業者の割合は、15週連続で1.6％だった。
5月21日週の州別動向は、以下の通り。
（増加が顕著だった州）
・テネシー州 2426人増、3週ぶりに増加
・オレゴン州 1882人増
・イリノイ州 859人増、前週から増加に反転
・メリーランド州 565人増
（減少が顕著だった州）
・ミシガン州 3075人減、2週連続で減少
→製造業が牽引
・カリフォルニア州 2952人減
→サービス業で顕著
・ミズーリ州 2353人減
→製造業、その他サービス、事務サービス、廃棄処理/管理サービスで減少
・ペンシルベニア州 2016人減、2週連続で減少
→宿泊/サービス、建設、製造業が寄与
・ニューヨーク州 1570人減、2週連続で減少
→建設、情報、輸送/倉庫で優勢
――米新規失業保険申請件数はヒストリカルのレンジ下限にとどまり、米5月雇用統計前に堅調な雇用情勢を確認しました。5月初めの急増がNY週の春休みに絡む教育セクターでの押し上げに加え、通信大手ベライゾンのストライキにすぎなかったようです。米5月雇用統計が予想外に堅調であれば、米連邦準備制度理事会（FRB）のイエレン議長が6日に行う経済及び金融政策に関する講演で、再び利上げ示唆を与える余地が残ります。
（カバー写真：Maryland GovPics/Flickr）
編集部より：この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年6月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。