サウジ「ビジョン2030」の具体的行動計画??

待ちに待っていた掲題がやっと出た、と思ったら、2020年までの行動計画だった。しばらく待っていたが、FTもドバイからMr. Simon Kerrの速報(FT Fast “Saudi Arabia reveal detail of plan to diversify its economy June 7, 2016 東京時間午後3時頃)記事を掲載しただけで、more to comeとなっている。

現時点では、2~3時間前に中東調査会の村上研究員が書いた「中東かわら版 No.41 サウジアラビア:『国家変革計画2020』」が一番詳しいようだ。

村上氏がTwitterで報じてくれた要約版に目を通してみたが、何のことはない、6月初旬までには出す、といっていた約束は守ったぞ、といった程度のものでしかない。各役所あるいは新設の組織が担当することになっているが、そもそもサウジの役人たちの遂行能力は十分なのだろうか。実務能力が確認されているサウジアラムコのスタッフたちが担当する箇所はどうやらないようだ。

もちろん、サウジアラムコのIPOについての行動計画も記されていない。

さて詳細は前述の村上論文を読んでもらいたいが、ポイントは次のようなものだ、

2020年までに、
①(サウジ人の就業人口の3分の2を占める)公務員給与が国家予算に占める比率を、現在の45%から40%に引き下げる(4800億リヤル=約1280億ドルから4560億リヤル=約1200億ドル)。

②非石油収入を、1635億リヤル(約440億ドル)から5300億リヤル(約1400億ドル)に増加させる。

③民間部門で45万人の新規雇用を創出する。

②の非石油収入は、FTによると、消費税、非サウジ人の所得税、タバコなどの宗教的罪税(sin tax)からなっているようだ。また、要約版によると、45万人の新規雇用のうち37万人はツーリスト産業(主に巡礼受け入れ)で増加させることになっている。

また、すべての行動項目に各担当の役所が指名されていて、地域の水準、世界の水準をベンチマークとして、ほとんどの項目に目標が定められている。

これから報告書全文を読もうと思うが、その前にFTなどがどのように解釈してくるのだろうか、興味がある。第一印象としては、このようなもので「ビジョン2030」が達成できるのだろうかと思うが、どうであろうか。特に、「国家変革計画(National Transformation Program)」と題されているように、たんなる経済構造の改革ではない、社会の仕組みそのものを変革することが必要とされているゆえ、保守的な宗教界やスデイリセブン以外の王族たちもが満足できる計画に仕上げられるのだろうか。

疑問は膨らんだままだ。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年6月7日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。