今回の安倍総理の突然の増税の先送りについて、霞が関の担当部局の官僚の方々に質問した。
「予定していた社会保障を充実策のうち、何をやめ、何を実施するのか?」
「予定どおり実施するものがあれば、その代替財源は何か?」
「総理の言う『アベノミクスの果実』とは一体何を意味しているのか?」等々
これらの質問に対して、財務省や厚生労働省の担当者はしどろもどろの回答しかできなかった。こうした様子からも、今回の先送り決定が、各省間の十分な調整もないまま行われたことは明らかだった。
官邸の一部側近と経済産業省の幹部が極秘に進めたという報道があるが、そのとおりなのだろう。苦しそうに回答する彼らが気の毒でならなかった。
安倍政権は、自分たちに都合のいい政策を、少人数で極秘に資料を作って強引に進める。
今までの歴代政権ではありえなかったことだ。
プロセスを無視したこんな意思決定を、ただ黙認していいのだろうか?
思い出して欲しい。2年前の集団的自衛権の行使容認の時の日本人母子が乗る米艦艇を防衛しなくてはならないというパネルについて。
「紛争国から逃れようとしているお父さんやお母さんや、おじいさんやおばあさん、子どもたちかもしれない。彼らの乗っている米国の船を今、私たちは守ることができない。」と総理は訴えた。
しかし、米国の戦艦は、原則、外国人の民間人を乗せないルールになっている。
専門家を交えて冷静に検討をすれば、こんな絵がつかえないのは明らかだ。
同様に、今回の消費税再送りに至るサミットに提出された4枚の「参考資料」も、あまりにも稚拙なものだった。
総理周辺だけで極秘に作成された「新しい判断」のもとになるもので、とにかく都合のいい数字をつまみ食いしている。各国首脳に配った英語版と、国内メディア向けの日本語版で書いていることもなぜか違う。
しかし、あまりにも説得力のない資料だったのだろう。一部のG7首脳がこの資料を見て唖然とし「危機とまでいうのはいかがなものか」と反論したことは、新聞記事やニュースになったので、皆さんもご存知だろう。
今回の消費税見送りの決定は、内閣府や財務省といった政府内の担当部局さえ外し、総理周辺の一部の人間だけで行われている。自民党の稲田政調会長でさえ事前にこの資料を見ていなかったと言っている。
税制のような日本の将来を決める重要な政策を、総理周辺の少人数でてきとうな資料を作って、国民感情に訴えながら強引に通していく。
このような意思決定方法は危険ではないだろうか?
このままだと、今後も、国を左右する重要な政策が、「権力者の周りにいる少人数」で「十分な検証さえなく極秘で」決められてしまうことになる。
私は野党だからこれに声をあげているのではない。
こういうことに、ちゃんと声をだす人が世の中に誰もいなくなることは、日本にとって問題だ。だから、私は声をあげたい。
自民党内でも同じ懸念を抱いている人もいるはずだ。
編集部より:この記事は、衆議院議員・玉木雄一郎氏の公式ブログ 2016年6月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。