日本国内の大手格付け会社、格付投資情報センター(R&I)は、政府が消費税率の引き上げを再延期することで財政再建に対する不透明感が高まったとして、日本国債の信用度を示す格付けの方向性を、これまでの「安定的」から将来的に引き下げる可能性がある「ネガティブ」に改めた(6月6日のNHKニュース)。
安倍首相が消費増税の再延期を表明したことに対し、海外の大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは直ちに日本の財政が悪化することはないとして当面、日本国債の格付けを見直すことはないという見解を示していた。これに対してムーディーズは財政再建の目標達成に対する疑念が強まったとして、格付けを評価する際にマイナスの要因になるという見解を示していた。
海外格付け会社は意外と冷静に見ているなと思っていたが、国内格付け会社による見通し変更は意外感もあった。とはいえ、格付け会社がこのような警告を発することは必要かと思われる。いまのところ日銀の大量の国債買入により需給はタイトとなっており、国債への信認も維持されていることで、日本の10年国債利回りが過去最低を更新するなどしている。
しかし、日銀の大量の国債買入により日本国債は価格発見機能を失いつつあることも確かである。それにより日本国債に対するリスクも覆い隠されている。しかし、それが突如として顕在化する懸念は存在する。禁じ手とされるヘリコプターマネー論も出てきているなど今後、日本国債のリスクが増加してくる懸念はありうる。
ムーディーズが1998年にはじめて日本国債の格付けを引き下げて以降、スタンダード&プアーズも含め海外格付け会社は幾度も日本国債を格下げしてきた。しかし、日本国内の格付け会社が動いたのは2011年12月であり、このときはR&Iが日本の外貨建て・自国通貨建て発行体格付けをAAAからAA+に引き下げた。しかし、これ以降はR&Iによる格下げはなく、現在R&Iの日本国債の格付けは上から二番目のAA+である。
海外格付け会社による日本のソブリン格付けは、ムーディーズがA1でアウトルックは安定的、スタンダード&プアーズ(S&P)がA+でアウトルックは安定的、フィッチがAでアウトルックはやはり安定的となっている。
これと比較してR&Iによる日本国債の格付けはまだ高いともみられ、その意味では格下げ余地はあるとの見方もできる。しかし、それでも日本の格付け会社が見通しを変更というのは海外の格付け会社の見通し変更に較べて重みもある。米国の格付け会社のS&Pが2011年8月に米国の長期格付けを最上位のAAAからAA+に1段階引き下げたときも市場に動揺が走った。
日本の国債市場は格下げに対してほとんど動揺せず、というのがアノマリーと化しており、今回のR&Iの見通し変更の反応も同様であった、しかし、国内の格付け会社が懸念を示したという事実はまったく無視してはいけないであろう。今後の日本国債に対する格下げの可能性は意識しておく必要があろう。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年6月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。