インセンティブ・オークションで電波が開放できる

池田 信夫


アメリカの600MHz帯のインセンティブ・オークションが始まり、ステージ1(電波の買収)がほぼ終わったもようだ。これは図のようにUHF帯のローカルテレビ局の電波をFCCが逆オークション(政府調達のように最低価格の業者から買う)で買い、それを携帯業者に通常のオークションで最高価格で売るものだ。

このUHF帯の問題については15年ぐらい前から議論が続いていて、FCCはテレビ局と携帯業者が同時に参加するオークションを考えていたが、MITで行なわれたワークショップで、私がペッパー局長に「そんなオークションは不可能だ。FCCがいったん買収する逆オークションをすべきだ」と提案した。

その後、彼のコメントも踏まえて2003年に“Spectrum Buyouts”というディスカッション・ペーパーを書いて、ペッパーやレッシグの参加したRIETIの会議で発表した。この逆オークションが、今回のインセンティブ・オークションのステージ1である。

今までに17ラウンドのうちの16ラウンドを終え、FCCはほぼ120MHz近くを取得したものと思われる。これはテレビ局の20チャンネル分で、日本で浪費されているUHF帯も同じ方式で買収すれば、一挙にこの2倍の電波があく。テレビ局はがらあきのVHF帯(1~12チャンネル)に戻れば、100チャンネルぐらい放送できる。

FCCがすでに実施していることでも明らかなように、周波数オークションでテレビの電波を再配置することは技術的に可能であり、経済的には数兆円の価値を創造する。これを妨害してきた櫻井俊総務次官が退官したのを機会に、アベノミクスの「第3の矢」としてオークションをやってはどうだろうか。