【映画評】64 ロクヨン 後編

渡 まち子
わずか7日間で終わった昭和64年に起こった未解決少女誘拐殺人事件を模した新たな事件が発生し、警察内部に動揺が走る。県警の広報官・三上は、上司の命令で、かつての被害者の父親・雨宮を訪ねるが、同じ父親として複雑な思いを抱く。警察組織内部の摩擦、警察と記者クラブとの対立、警察上層部の画策…。それぞれの思惑がからみあう中、三上は、警察内部の隠ぺいの事実を知ることに。ロクヨンを模した事件は思いがけない展開となっていく…。

横山秀夫の原作を基にしたサスペンス大作の2部作の後編「64 ロクヨン 後編」。事件はいよいよ佳境に入り、過去のロクヨンと現在のロクヨン(模した事件)が複雑にからみあっていく。サスペンスなので、詳細を明かすわけにはいかないが、正直に言うと、前編の方が出来は上。というより、前後編に分けてまで描く必要があったのか?!との疑問がわいた。この物語の個性は、主人公が、刑事ではなく、広報官だという点にある。警察と外部を結ぶこの役目に、スポットライトを当てた功績は大きい。だが、前編でさんざんやった記者クラブとの対立に割く時間が長すぎて、サスペンスとして盛り上がらないのだ。原作との差異は、映画化するに当たって、どうしてもついてまわる問題なので、原作ファンには申し訳ないが、映画化する以上、致し方ないだろう。

ただ、この物語は、TVドラマ化もされていて、そちらでは約2時間できっちり収めているのだから、映画版が冗長に感じるファンは多いのではなかろうか。出演者のほとんどが主役級という超豪華キャストは、さすがに見応えがある。元刑事で現広報官という複雑な立場の主人公の熱意と葛藤を、丁寧に演じる佐藤浩市はさすがだし、被害者の父を演じる永瀬正敏の狂気を秘めた執念の演技も見事。見終われば、これは父親たちのドラマだったのだと納得するはずだ。
【65点】
(原題「64ロクヨン後編」)
(日本/瀬々敬久監督/佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、他)
(対立構造度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。