「お金の自由」より「時間の自由」が大切

内藤 忍

人生とは、2つの大きな制約の中で最適解を見つける作業だと思うことがあります。2つの制約とは「お金の制約」と「時間の制約」です。

25年以上続けていた会社務めを辞めて、自分で仕事をするようになって良かったことは、「時間を自分でコントロールできる自由」が手に入ったことです。アポイントやミーティングの予定も相手と調整しながら、自分のペースで入れることができます。

午前中には予定を入れないようにすれば、好きな時間に起きて、好きな時間に寝られるようになります。満員の通勤電車に乗ることもありません。休みの日も自分で決めて、平日に出かけたり、気が向いたら2週間、3週間旅行に行くことも自由です。

不規則に、楽な生活をするということではなく、自分の時間を使う選択権が常に自分にあるという状態が、ストレスを感じない生活を実現してくれるのです。

組織に所属して仕事をするのを辞めて、自分で仕事を始めようという場合、一番のハードルは「お金の制約」です。大手企業に勤務して、安定した仕事で、多額の給与をもらっている人であればあるほど、現状の経済的状況を捨てるのに躊躇(ちゅうちょ)する気持ちは良くわかります。

独立した当初は、ほとんどの人は所得は低下するはずです。事業が軌道に乗るまでは収入も少ないでしょうし、立ち上げ当初はある程度の初期費用がかかるからです。設備投資のほとんどいらない仕事であっても、会社の登記やプリンター、ハンコ、名刺、封筒といった備品の調達、オフィス賃料などはかかってきます。私の場合も、最初の頃は収入が5分の1くらいまで激減したこともありました。

組織に雇われる身から脱出すると、お金の自由は無くなるかもしれませんが、時間の自由は手に入れることができます。そして、事業が軌道に乗り始めれば、いずれお金の自由も手に入れることができるようになり、2つの自由を手にすることができるのです。振り返ってみると、そのハードルは、始める前に思っていたよりもずっと低かったと感じています。

資産デザイン研究所を設立しようと考えてから、もう4年になろうとしていますが、今思うことは、お金の自由を失うことを恐れて、時間の自由を手に入れないのは勿体ないということです。

勿論、大企業でしかできないビジネスの醍醐味があることも理解しています。そんな仕事にコミットすることが無上の喜びというのなら、それを否定するつもりはありません。しかし、時間の自由というのは、思っていた以上にクオリティ・オブ・ライフに大きな価値をもたらしてくれました。

それに気が付くのがもっと早ければ、私の人生は今とは随分違ったものになっていたと思っています。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年6月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。