共産党の藤野政策委員長は、NHKの番組で防衛費について「人を殺すための予算」と発言したことへの責任をとって政策委員長を辞任した。これは常任幹部会による更迭であり、共産党として自衛隊を認知したわけだ。
しかしこれは共産党の「自衛隊の増強と核武装、海外派兵など軍国主義の復活・強化に反対し、自衛隊の解散を要求する」という綱領と明らかに矛盾する。また共産党は一貫して「自衛隊は憲法違反だ」と主張しており、自衛隊を合憲と認める民進党と共闘することはできないはずだ。
それをごまかして「災害のときは利用する」などという欺瞞に、安倍首相が「国民を守る為昼夜分かたず汗を流す自衛隊員やその家族に対する侮辱であり、憤りを感じます」とコメントしたのは当然だ。
民進党は「与党に2/3を取らせないことが目標だ」といいながら、憲法を争点にしないで「安倍政権のもとでは改正反対」という曖昧なスローガンを掲げている。党内にも改正すべきだという議員が多いから反対することもできず、自衛隊を人殺し扱いする党と選挙区事情で共闘している。これはまったく政権を取る気がないからだ。
自民党の改憲案は時代錯誤だが、改正のやり方はそれだけではない。単に第9条を削除しろという意見もある。「憲法を改正すべきだ」と主張する安倍首相は明快なのだから、憲法をどう改正するのか、この機会に論争すればいい。それを避け、民共の食い違いを隠した欺瞞的な選挙戦は、有権者を愚弄するものだ。