投資でお金を儲けるのは悪いこと?

内藤 忍

家計簿アプリのマネーフォワードという会社のサイト上で「お金のコンサル団」という相談コーナーを担当しています。寄せられたご質問に週に1回、回答する形式ですが、気が付けば3年が経過し、150回目になりました(有料会員向けサービスです)。

その中に、「投資でお金を儲けるのは悪いことをしているようで、気が進まない」という相談がありました。仕事をして汗水たらして稼ぐお金は価値があるけど、資産を運用して稼いだお金はあぶく銭ではないかという疑問です。

資産運用で儲ける方法には、投資と投機の2種類があると思っています。その違いは、新しい価値が生まれるか生まれないかです。

投資とは、自分の投じたお金が有効に使われることによって、世の中に新しい価値が創出され、それがリターンとして戻ってくる行為と考えることができます。例えば、投資先の企業が、今まで世の中に無かった商品やサービスを提供し、世の中を変えていく。世の中が豊かになっていくお手伝いができます。

投資では、新しい価値が生み出された分、プラスが生まれていますから、自分が得をしても、誰も損をしていません。世の中全員の人が得をしている可能性もあるのです。

投資とは対照的に投機とは、富の創造ではなく、富の奪い合いです。短期の売買であれば、投資ではなく投機になってしまいます。

例えば、自分がドルを100円で買って、101円で売却すれば、どこかに100円で売って、101円で買った人がいるはずです。自分が1円得をした時に、自分以外の世の中全体では1円損しているということです。デイトレードのような短期の売買で得られた利益には、価値の創造はありません(流動性の供給という役割はあります)。大きさが決まった1つのケーキをどのように分けるかをみんなで奪い合うような状態です。自分が大きな分け前を取れれば、他の人にそのしわ寄せがいくということです。

このように資産運用の世界には、社会の役に立つことによって得られる利益(投資の利益)と、社会の誰かを犠牲にすることによって得られる利益(投機の利益)の2つがあると思います。投機に関しては議論がありますが、投資はお金を持っている人であれば誇りをもって取り組むべきことだと思います。

資産を持っている人には、投資によって社会に価値創造が生まれることのサポートをしていく義務があるとさえ言えるのです。

利益というのは、自分のやったことに対する社会からの感謝の印と考えることができます。それが自分が働いた仕事によるものであろうと、お金が働いたことによるものであろうと、どちらが良い悪いという貴賤は無いのです。

※毎週金曜日に配信している「資産デザイン研究所メール」。資産を守り増やすためのヒントから、具体的な投資のアイディア、そしてグルメな情報まで、メールアドレスを登録するだけで無料でお届けします。

※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年6月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。