高齢化問題とは「贅沢な悩み」?

内藤 忍

日本経済新聞の報道によれば、2015年国勢調査(抽出速報)で、全ての都道府県で65歳以上の高齢者の割合が、15歳未満の子供の割合を上回りました(グラフも同紙より)。総人口に占める高齢者の割合は26.7%となり、2030年には65歳以上人口は31.5%に達するという予想です。

高齢化は単に年齢構成が変わるというだけではなく社会を大きく変える要因になると思います。

高齢者が多くなれば、医療費もかかるようになります。例えば、老人ホームのような施設に入居する高齢者は168.5万人となり5年前の4割増、10年前の2倍になっています。政府の社会保障費は今後も減ることはなく、増える一方です。しかし、社会保障の削減はシニア層の反発を招くことから政治家も及び腰です。「シルバー民主主義」によって、日本の財政の建て直しはほぼ絶望的です。

また、一人暮らしをする高齢者も高齢者全体の16.8%と増えてきています。この比率も今後さらに高まると予想され、単身高齢者対策も本格的に考えなければいけなくなってきます。

世界の最先端を走る超高齢化社会の日本では、今後年金支給開始年齢の引き上げ、企業の定年退職年齢の引き上げ、女性の社会進出の促進と同時に、男性の育児・家事への従事がしやすい制度を作るなど、抜本的な社会構造の変革が必要になってきます。

10年後、20年後には、60歳で仕事を引退するのは「アーリーリタイアメント」になり、多くの人は70代になっても現役で働き続ける社会に変わっているはずです。そして、働き方の形態も、1つの会社に所属して、都心にあるオフィスに毎日通勤するスタイルは無くなっているかもしれません。

単純労働の多くはロボットに取って代わられ、知的労働だと思われていた弁護士業務やファンドマネージャーのようなホワイトカラーの仕事もAI(人口知能)でかなりの部分が代替されている可能性があります。

高齢化社会というと、ネガティブなイメージが先行しますが、長生きして、健康で生きがいのある人生を全うできる人が増えることは、幸福な時代だと考えることができます。病気や事故、過去には戦争で、無念の人生を終えた人がたくさんいることを忘れてはいけません。

そう考えると、日本の高齢化問題は、私にはとても贅沢な悩みに見えてしまうのです

せっかく長生きできる時代に生まれてきた幸福を、ネガティブな悩みにするのではなく健康で悔いのない人生を全うすることで、味わい尽くそうではありませんか。

※毎週金曜日に配信している「資産デザイン研究所メール」。資産を守り増やすためのヒントから、具体的な投資のアイディア、そしてグルメな情報まで、メールアドレスを登録するだけで無料でお届けします。

※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年6月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。