良書は人生に三度読みなさい

小生は今週火曜日、経済情報番組「モーニングサテライト」の「リーダーの栞」というコーナーに出演し、森信三先生の『修身教授録』(致知出版社)を御紹介しました。当日リツイートしておいた通り、その後に当該書が「Amazon本ランキング24時間で、1843位⇒1位に急浮上し」たようです。

私は上記コーナーで実際に、付箋を張り捲ったり線を引き捲ったりしている本そのものを見せ、ある面で迫力を持って熱っぽくその偉大さを語りました。それが多少なりとも影響しての「急上昇」かもしれません。少なくとも私宛に送られてくるメール等から察するに、「魂が揺り動かされる位の感動を受けた本なら、私も読んでみようか」と思われた方が結構いたということでしょう。

修身教授録』とは、森先生が40代前半に天王寺師範学校の「修身科」で講義された内容を生徒が筆記したもので、人生のあらゆる課題がテーマ毎に記されているものです。人間ある年齢になったらば己の半生を振り返り、「今後どういう生き方をして行けば良いか」と、皆悩む時期があると思います。誰しもが自分の来し方行く末に思い巡らせて、「人間としての生き方」に反省する時が必ずあるはずです。

今回ご紹介した本が、そうした反省も込めて人間としての生き方を学びたいといった視聴者の思いに、ある意味合致したのかもしれません。そういう意味では似たようなに森先生は、「良書は人生に三度読みなさい」と言っておられます。『修身教授録』もまた、青年・立志・晩年という人生の岐路のタイミングで読むべき書だと思います。

学生時代に読んだとしても、深いところまでは理解できないかもしれません。しかし多感な時期に、人間や物事の本質的な考えに触れておくことは非常に大切です。また30代・40代になれば、それなりの経験も積んでいます。誰が出世したとか給料がいくらとかと、そうした類をチマチマと考えるのでなく、「人間とは何か」といった大きな問題を考えることが、その後の人生をプラスに変えて行くでしょう。

私自身、長年の研究テーマは「人間とは何か」「人間如何に生くべきか」ということで、これまでずっと中国古典を中心に様々な書物を渉猟してきました。こうした事柄は何千年もの昔から洋の東西を問わず、偉大なる哲人達が考え抜いてきた究極のテーマです。そして晩年60歳を過ぎて第二・第三の人生を考える年齢にあっても、今一度『修身教授録』を読み直しながら、来し方を反省しつつ行く末に思いを馳せるべきです。

人生には、そういうタイミングが三度位はあるはずです。今回そういう時期に当たった人の多くが、「北尾さんがあれだけ御推奨になられ、あれだけ読み込まれている本は、きっと良い本に違いない。ならば直ぐに読んでみよう」と、思われたのかもしれません。

森先生にしても孔子にしても、あるいは安岡正篤先生にしても、その思想は今日まで語り継がれ、読み継がれて共感得ているものであります。私自身、魂が打ち震えるような感動を覚え、同時に自身の未熟さを思い知らされた森先生の『修身教授録』には必ずや、何時の時代に誰が読んでも感銘する部分があると確信しています。

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