【映画評】ウォークラフト

長い間、平和な時代が続いていた王国アゼロスは、今や戦争の瀬戸際にあった。滅びゆく故郷を捨て、定住地を求めるオークの戦士たちが、新たな定住地をアゼロスに求めて人間に戦いを挑もうとしていたのだ。人間たちは自国を守るため立ち上がり、オークとの全面戦争を決意する。しかしアゼロスの騎士ローサーは、人間とオークのハーフ、ガローナと協力し、全面戦争を避けようと試みる。一方、オークのデュロタンもまた、人間との戦いに疑問を持ち、一族を守るためには、人間と手を結ぶべきだと考えていた…。

 

登録者最多のMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)としてギネス世界記録に認定されている大人気ゲームを映画化したファンタジー大作「ウォークラフト」。私は実はこのゲームに関してまったく無知なのだが、物語の概要をザックリと表現すると、剣と魔法の世界アゼロスを舞台に、人間、オーク、ドワーフ、エルフなどの多数の種族が戦いを繰り広げる壮大なストーリーというところだろうか。

「ロード・オブ・ザ・リング」的な要素が多いので、映画ファンにはこの世界観はさほど違和感はないかもしれない。複雑なストーリーは比較的分かりやすく整理されているが、何しろキャラが多い上に、世界と世界をつなぐ入り口ダーク・ポータル、魔法の種類と効果、人間を守る守護者(ガーディアン)さえも操る邪悪な力…と、情報量が膨大なので、やはりゲームを知らない身としては、ついていくのがやっと…いう印象だった。

ファンタジーに不可欠の笑いの要素がみじんもないのもちょっと残念。しかも、本作は3部作の序章。話はスペクタクルだが物事は何ひとつ解決していないので、とりあえず続きを待つしかない。ファンタジー大作のイメージからはほど遠いダンカン・ジョーンズが監督として健闘していること、壮大な叙事詩を映像化したCGIが素晴らしいことは評価したい。

昨今の超大作映画の例に漏れず、本作にも中国資本がしっかりと投入されている。…しかし、闇組織のリーダーで悪の侵略者グルタンを、美形俳優ダニエル・ウーが演じる必要があるのだろうか?!顔はおろか、姿形も原形をとどめないキャラでは、ファンの嘆きが聞こえてきそうだ。

【55点】
(原題「WARCRAFT」)
(アメリカ/ダンカン・ジョーンズ監督/トラヴィス・フィメル、ポーラ・パットン、ダニエル・ウー、他)
(ゲームファン向け度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年7月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。