東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇

竹内 健

東芝の会計事件に関して、スクープを連発した日経ビジネスから出版される「東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇」を、発売に先立って献本いただきました。

まだ最初の方を読んだだけですが、なかなか読み進めることができません。

というのも、この本の大半が内部告発の生々しい証言を引用し、いかにして不正が行われたかについて書かれており、一つ一つの文章がとても重いのです。

読んでいると、それぞれの人がどういう思いで内部告発したか、と考えてしまい、簡単に読み進めることができません。深く考えてしまいます。

おそらくリスクがとても大きい中、東芝が立ち直ってほしいという思いもあって、告発したのでしょう。

この本は直接的には、8名の日経ビジネスの取材陣が執筆していますが、800人以上もの内部告発者の思い、人生を集大成した本になっています。

これ以上生々しく不正を暴いた本はそう無いのではないかと思います。

その一方、私の知り合いの東芝のOBの中には、

「そんな本は読みたくない。みんなやっているようなことだろうに、何が悪いのかもわからない。知らんぷりすればよい。」

と言う人も居ます。

そういった態度こそが、あれほどまでの巨額な会計不正を生み出したのでしょう。

自らのリスクを顧みず内部告発する人も居れば、不正をいまだに悪い事とも思わない人も居る。

それが現実なのでしょう。

だからこそ、この本の1ページ、1ページは、日本社会の矛盾やその中で苦悩する人々の生きざまが垣間見れて、深いのです。

山崎豊子さんの著書、例えば「沈まぬ太陽」に通じるものがあるな、と思いました。


編集部より:この投稿は、竹内健・中央大理工学部教授の研究室ブログ「竹内研究室の日記」2016年7月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「竹内研究室の日記」をご覧ください。